中央製作所南工場は、東海道線の車窓を、まちなみを捉えるもう一つの視点として位置づけ、町工場が集まる周辺地域と、そこを通過する列車の双方に、工場の活動と企業の個性をひらく建築である。
線路に面した2階には、会議室や休憩室、吹抜を大きな窓越しに見せ、同社の製品を想起させる色彩を配した。走行する列車からの風景は一瞬であらわれては消える。そのため、窓の大きさ、色彩、社名サインなど、短い時間でも認識される要素によって外観を構成した。また、窓越しに見えるこの吹抜は、1階工場への採光と重力換気を担う環境装置でもあり、企業が行う環境配慮型のBtoBビジネスと呼応している。昼には働く人々の姿が、夕刻には窓から漏れる光が車窓にあらわれ、日々繰り返し目にすることで、沿線の風景として人々の記憶に残ってゆく。
地域に面する南側には、電気設備を製作する企業を象徴する大型トランスを収めた「出窓」を設け、足元には市松模様の緑化帯を配し、塀はメッシュフェンスとした。企業の仕事を伝える設備と緑によって、閉鎖的になりやすい町工場の外周に表情をつくった。完成後には、地域の人々から「周辺が明るくなった」との声が聞かれるようになった。