November 21, 2008
ついにオープン(ジム編)

…って、最近似たようなタイトルのニッキを書いたような気もするけれど。
僕は人一倍飽きっぽい方だが、スポーツクラブはなんとか続いている。というより、逆に盛り上がりまくっていて自分でも怖くなる。なんとか早めに仕事を切り上げ、8時過ぎには家に戻ってウェアに着替えてイソイソと出かける。4日に3回くらいは行っているんじゃないだろうか。帰ってからも、一度は飲んでみたかったプロテインやアミノ酸を試してみたりとか、ネットで読んだストレッチをやってみたりとかしている。習慣的に運動をしたことがないので効いているかどうかは全然分からない。食生活自体はあんまり変わっていない。体重計も体脂肪計も無いので痩せているのか、太っているのかも不明。痩せたね、と言われる事もあるが、最近バッサリと髪を短くしたのでそれのせいかもしれないし。
「すぐに出来る!」と言われていたジムが、1ヶ月遅れてやっと使えるようになった。それまで顔パス状態だったのだが、突然会員証の提示を求められる。どうして?と聞くと、「正式オープンしたから」なんだそうだ。この一ヶ月間はモグリ営業だった、という衝撃の事実。
というわけで最近は筋トレも始めた。大学生以降の運動不足で退化しまくった筋肉は、ちょっとやそっとのサプリメントでどうにかなるものではない。筋肉痛と暮らす毎日。痛むカラダをやっとの事で折り曲げて、贅肉がまとわりついた三段腹を眺め、倍の数に割れた姿を想像してニヤついている。我ながら非常に気持ち悪い。
日本だと、軽いウェイトでギャアギャア騒いだり、短い距離を泳いだだけでゼエゼエ息を切らそうものなら、軽蔑の入り交じった視線を投げ掛けられるだろう。いや、実際は、みんな、そんなに他人の事なんて気にしていないのだろうけれど、良くも悪くも、そういう視線を気にせざるを得ない空気が社会に充満している。いや、ちょっと話を広げすぎた。少なくとも日本のジムはそんなオーラを放っていて、それが、僕らの足を遠のかせている。僕ら、とか勝手に一括りにしてしまったけれど、クリオネ並みの小さい心臓のくせに自尊心はイッチョマエ、そんな僕らのプライドは、10キロくらいのウェイトでギブアップする事を許しはしない。隣のマシンにイイ感じの女の子が居たらなおさらだ。美人トレーナーに慰めの言葉なんてかけられたら死んでしまいたくなるだろう。無理しちゃう。だから、きっと、続かない。
幸い、ここのスポーツクラブは周りの目を気にしなくていい。みんな思い思いに好き勝手やっている。こちらも好き勝手にウギャーウギャー騒ぎながらウェイトを上げている。トレーナーらしきスタッフも居るには居るけれど、自分自身のトレーニングをやっている有様。声をかけない限り近寄って来ない。まあ、たぶん、質問しても期待するような答えは返って来ないだろうし。
プールでも、みんな好き勝手に泳いでいる。まともな水泳の授業を受けていない若者達はメチャクチャな泳ぎ方をする。反対に、水泳を愛した毛沢東の影響だろうか、泳ぎのうまい人は熟年層に多い。でも、みんな平泳ぎ中心で、クロールをキチンとしたフォームで泳げる人はまず居ない。クロールができればちょっとした優越感に浸れる。背泳ぎやバタフライを泳ごうものなら羨望の眼差しを浴びる。
僕はスポーツはからきしダメなんだけれど、泳ぎだけはできる。カナヅチの父は、水泳の授業がイヤでイヤでしかたがなかったらしい。「走るのは遅くても走れるが、泳ぎは泳げないと泳げない」と、僕をスイミングスクールに通わせてくれたお陰で、両親の運動神経ゼロの血を正しく受け継いだ僕でも、泳ぎに関しては比較的まともだ。競泳なんて実に20年ぶりくらいだが、カラダがフォームを覚えていた。三つ子の魂百まで、とは大げさだが、バタフライの息継ぎのタイミングを思い出したときは嬉しかった。
というわけで、プールから上がった後のサウナでは、「おまえ泳ぎうまいよなぁ」とよく声をかけられる。日本ではなかなか味わえない優越感が、明日も僕をマンションの地下へと向かわせる。予定だ。
写真:中国は上海蟹の季節。絶望的に可愛くないキャラクターを見つけてしまった。上海蟹はオスとメスがあり、オスにはミソが多く、メスには卵がある。それぞれに美味しいとされる季節がある。甲羅をむしり取り、中のミソや卵をシャブリ尽くし、手足を引き裂きつつ歯で砕きながら美味しく頂く。そんなとってもグロテスクな食べ物を、擬人化する必要がどこにあるのかね。却って食欲無くしそうだよね、とか思いながら、やっぱり美味しく頂きました。
投稿者 tofuku : 12:46 AM | コメント (2) | トラックバック
November 02, 2008
健身その後

最近のランチ。いつもニコニコ看板娘の彼女は、山西省出身。ほったて小屋みたいな店を任されている。暇な時にはファッション誌を読んでいる…半分くらいはダイエットの記事。
オリンピックの前後は、僕のオリンピック景気への期待とは裏腹に、はっきり言ってヒマだった。工事は止まるわ、経済も停滞するわで、スタッフも「暇すぎて気が狂いそう!」とか言い出して、事務所の雑誌を読みふける始末。度を超してヒマになると仕事に対するモチベーションまでが低下してしまう。経済的な事も心配だけど、そちらの方がもっと深刻だ。このニッキに「ヒマだ!」とアピールした所で、仕事が来る訳でもない。他の日本人建築家は大陸を飛び回って仕事をしているのに、こいつは中国まで行って何やってるんだ!と、お客さんを躊躇させてしまうだけだろう。
当然、僕自身も先行きに不安を抱えるわけだけれど、所詮外国人なので、やれる事は限られている。ジタバタしても仕方がない。僅かに進む工事の監理をやるほかは、仕事がありそうな知り合いに電話をかけたり、広報活動をちょろっとやったりくらいしかできなかった。スポーツに縁遠い僕が、突然スポーツクラブに行きだしたりして「一体何が起こったの!かえって心配!」と身近な人々を心配させたのも、まあいってしまえばヒマのなせる技だ。
街を行く妙齢の女性達が、思わず面積を算出してしまいたくなるような、もっと言うと三つの角を合計すると2直角になる事を確認したくなるような。このヒマな時間をつかって、そんな逆三角形になってやる!と思っていたのだが、なかなかうまくいかない。クラブに通い始めると時を同じくして、ドカドカと依頼が来て、ニワカに忙しくなってしまった。正直、今のスタッフ数では全然廻らない。だからといってまだ設計料を貰える段階まで行っていないので、スタッフを増員するわけにもいかない。結果、僕自身に多量のタスクが降り掛かって来てしまう。やってきた仕事は他の事務所との共同作業で、北京中心部へ毎日行かなければならないので、ジムが空いている時間に帰ってくるのは難しい。時間を見つけてはなんとか通っているが、最近は行けて隔日くらい。

先日、おっ!今日は泳げそう!と急いで家に戻り、素早くジャージに着替えて行ったところ、受付で「今日はプールが壊れてて泳げない!」と言われてしまった。プールって、壊れるモノでしたっけ?と憤りつつ、運動する気満々だっただけに、エネルギーのやりばに困って近所を散歩してしまった。
「直ったら電話するから」と言われ、その後2ー3日待っていたが、一向に連絡がない。痺れを切らして電話すると「ああ、もう直ってるよ」。おいおい…と思うが、長いこと中国に居ると、そういう事は慣れっこになってしまうんだな。
受付嬢に「ジムに機械が入って来てるよ!まだ設置中だけど」と言われ、様子を見に行く。凄い!パタパタして胸筋を鍛えるアレや、足を鍛えるアレ、なんて言うか知らないけれど、おそらく舌を噛みそうな長い名前であろうアレ達が大量に置かれていた。足の踏み場も無い…つーか、多すぎないか?レイアウトも考えずに勢いで買ったんだろう。ストレッチどころか、人が歩くスペースすらない。多すぎない?とスタッフに言うと、まったくお前の言う通りだ、うん、もっともだ!というリアクションをされた。
このスポーツクラブ、突っ込み所満載だ。人の居ない時間帯に行くと、電灯が消えて真っ暗だったりする。おかげで、施設内のスイッチの位置を覚えてしまった。ルームランナーのスイッチを発見したのも僕だし、スイッチの位置に関してはスタッフより詳しいかもしれない。唯一、まだ良く分からないのがサウナのスイッチの入れ方で、これはスタッフに頼まなければならない。おーい、そろそろ上がるからサウナ入れといてくれー!と行く度に叫んでいるが、サウナは電気を食うらしく、なかなか入れてくれない。暖まるのを待つのは嫌だからさぁ、とその度毎に説得する。
最高に褒めて言えば、アットホームな雰囲気だな。働いているスタッフの人柄は悪くない。
投稿者 tofuku : 05:57 PM
October 27, 2008
設計者Xの健身

美術館の現場の近くに借りたマンションに住み続けている。北京のマンションのグレードとしては中の上くらいだと思う。外国人が住むマンションとしては下の下だけれど、独身者にとって住み心地は決して悪くなく、居着いてしまっている。部屋は北向きだけれど、21階なので、天気の良い日は遠くまで見渡せる。北向きの部屋は景色を順光で見る事ができるので、決して捨てたもんじゃない。
中国の場合、施設の全てが完成していなくても、入居が開始される場合が多い。2年前、ここに越して来たときには、外構がぜんぜんできていなかった。数ヶ月遅れて、庭が整備され、さらに2年遅れて、残りの住棟が完成し、最近ようやく全て完成した。
巨大開発では、広い敷地にノッポの住棟が立ち並ぶ事になるので、残りの部分を埋める必要が出てくる。散歩や、ベンチでくっちゃべる事が人々の生活に染み付いていることもあり、外構の設計が重要になる。ランドスケープの設計は「園林設計」と呼ばれ、ローカルの事務所には専門の設計者を抱えている所も多い。彼らは数をこなしているので、樹種に対する知識も含めて引き出しが多い。日本人の設計者よりよっぽど巧いかも、と思う事もある。

で、最近、その「園林」の中に、ガラスの物体が出現した。温室か何かかな、と思っていたが、近づいてみると下に下りてゆく階段がある。ああ、駐車場の入口ね、と思っていたら、そのうち「健身」の看板が掲げられた。フィットネスクラブだった。
え?本当?地下にあるの?と中に入ると、スタッフが走って来て、これでもかと案内される。といっても、プール以外は、ぜんぜん完成していない。まだ職人が作業しているゴミだらけの部屋を見せられ、「ここがジムになります。トレーニング機械が沢山入る!」って言われてもねえ…。卓球室は卓球台がポツンと置かれているだけだし…
料金は、開店特別価格で1年1300元、日本円で2万円くらい。日本だと、月1万円はかかるから、だいたい6分の1。安いな…久しぶりに泳いでみるか、と入会してしまった。北京のイトーヨーカドーで水着やトレーニング用の服装をそろえ、通い始めてみたらこれがなかなか良い。最初は、突然運動したら心臓止まるんじゃないかと恐る恐る泳いでいたが、ここ最近はいい感じに習慣化してきた。近いので、サウナとシャワーが風呂代わりにもなる。ひょっとしたら続いてしまうかもしれないよ。
ここは、目標を上げて、すれ違う女の子達が「ていへん、かける、たかさ、÷2…」とサブリミナル的に三角形の面積公式を思い浮かべてしまうくらいの、逆三角形のカラダを目指してみるか。愛読する雑誌が「サイゾー」から「ターザン」に変わる日もそう遠くはない!…かもしれない。

毎晩、この輝く入口に蛾のように吸い寄せられてゆく。
会員になったからには、ジムの方も使ってみたい。行く度に「ジムはいつから使えるの?」と聞いていたが、「馬上!(もうすぐ!)」という返事しか帰ってこない。こいつら、さてはジムを作る気ないな…と思い始めた頃、スタッフの女の子が駆け寄って来て「ジムに機械が入った!」という。おお!と行ってみると、相変わらず施工中の部屋の片隅に、ルームランナーだけがちょこんと置かれていた。彼女は鼻息荒く「どうだ!」と言わんばかりの自慢げな表情。ツッコむ気にすらならない。
仕方ないので試してみるから電源を入れるようにと言うと、コンセントの差し込み口が合わない。客を案内する前に一度試そうよ、お願いだから…とも思うが、彼女はあの日本人に早く教えてあげなきゃ!と親切心で案内したのかもしれないので、責める訳にも行かない。延長タップを取りに行ったりとドタバタやったあと、ようやく接続。その後、電源を探して再びドタバタやり、遂に僕がスイッチを発見して電源投入。
電源の位置も知らないくらいだから、スタッフはルームランナーの使い方なんて知るわけが無い。廊下で壁の塗装工事をやっていた大工までが参加して、3人がかりでボタンを押しまくって試行錯誤した末に、使い方を習得した。もちろん、その間、僕がベルトコンベアーの上で突然爆走させられたりしたのは言うまでもない。僕はトレーニングしたいのであって、安っぽいコントを演じる気はさらさらない。
なにせ風呂代わりだ。結構な頻度で通っているので、受付は既に顔パス状態である。最近は外国人の客が増えて来ているらしく、受付の子は英語の勉強を始めたようで、「あなた外国人だから英語くらい出来るでしょ?」という感じで参考書を見せられる。"Chinese is the greatest people!"という例文を読みあげると、「すごい!三か国語も話せるんだ!」と羨望の眼差し。もちろん悪い気はしなかったが、「中華人民は世界で最も偉大な民族である!」という、微妙に間違った、しかも変な政治思想が紛れ込んでいる中国語訳を見て、「とりあえず、参考書を換えた方が良いと思う」とアドバイスした。もうちょっとましな例文ないのかよと。
投稿者 tofuku : 12:54 AM | コメント (5) | トラックバック
October 24, 2008
建材城

スケルトン/インフィルという言葉がある。ざっくり言うと、建物の構造部分と内装を別々に考えて、内部を必要に応じてシャカシャカと入れ替えた方が便利なんじゃないの?という話で、以前日本でよく聞いた言葉だ。だが、中華圏では、そんな事わざわざ言わなくてもスケルトン/インフィルの考え方が浸透している。設計作業も、施工も、契約も、たいていは「建築」と「内装」がガッチリ分かれていて、例えば外壁の材料が内部にまで入り込んでくる場合には、とっても苦労する。
マンションもコンクリート剥き出しの状態で引き渡される。もちろん、みんながみんな、インテリアデザイナーに頼むわけではなく、持ち主が自分で内装を行う場合が多い。そのためのアンチョコ本もいろいろ出版されているし、会社によっては「マンションの内装監理休暇」みたいなのも認められているらしい。つまり、「今日はペンキの色を決めなきゃならないんで早退します」なんて理由が堂々と通るということ。
であるからして、お客さんも建材やデザインにとっても詳しい。よって、インテリアデザインを名乗るからには、よっぽど目立つ事をやらなきゃならんというプレッシャー生まれ、あげくの果てに目がチカチカするような「やりすぎ感」ムンムンの内装が街の至る所に生まれてくると言うわけだ。
もう一つ。中国人は基本的にカタログを信用していない。カタログの写真なんて嘘っぱちだと思っているところがあり、決定するためにはサンプルを確認しなければ気が済まない。全部の材料や設備をいちいちサンプル請求するわけにもいかないので、建材を一覧できる場所が必要になる。そうして生まれたのが「建材城」と呼ばれる建材市場だ。ココで内装業者に建材を買い与えて、作らせるという寸法だ。
内装の仕事では、少なくとも数回は建材市場に足を運ぶことになる。最近行ったのは、城外城という家具中心の市場。北京最大級の規模を誇る。

オフィス用の椅子の店。一番手前の列のパイプ椅子は2000円程度。「オフィス用家具」だけで数万平米あるので、たいてい一つくらいは「許せる」デザインのものが見つかる。有名デザイン家具の「コピーっぽい」製品もかなりあるが、ここでは、そのものズバリのコピーは殆ど見かけない。

うーん。良い線行ってるけど、どっかで見たような…
投稿者 tofuku : 02:31 AM
October 12, 2008
上を向いて

「VIP碁会所」と呼んでいる物件も、もうすぐ完成しようとしている。まだ膜は取り付いていないが、光の効果も期待どおり行きそう。もう少しすればキチンと写真撮影できるので、詳しい話はその時にでも書こうと思う。

天井の設計に注力している。たいていの場合、天井は設備の縄張りだ。あなたのオフィスの天井を見上げれば、蛍光灯、非常照明、空調の吹き出し口、煙感知器やスピーカー…などが散らばっている事だろう。中国ではこれにスプリンクラーが加わり、現場ではこれらの配置の調整に四苦八苦することになる。
でも、逆にいうと、天井ほど将来的にオリジナルに保たれる部位もない。床は家具やカーペットが置かれるし、念を入れて家具のデザインをコントロールしても、そのさらに上に変なモノが置かれてしまったら元も子もない。壁だって汚れるし、地図やポスターが貼られるかもしれない。…でも、天井をいじくる人はあまりいない。この物件ではそのへんを割り切って、天井>壁>床>家具の順番で重きを置いている。多少変なモノを置かれても、それに負けないような強度を天井に持たせた。
インテリア・デザインでは、通常は家具の設計や選択に注力するのだけれど、これに関して言えばあまり頑張っていない。デザインされたカッコいい家具も良いが、使い慣れた普通の家具、たとえばパイプ椅子と会議用の長机を並べるだけでも、まあいいかと思っている。何せ「頭脳スポーツのための体育館」だ。体育館の設計者が、選手のラケットやシューズに何も言わないのと同様に、使う道具にあれこれ言うべきでないんじゃないか。もちろん、施主から頼まれた場合は、話は別だけれど。
投稿者 tofuku : 05:12 PM
October 04, 2008
いよいよオープン

諸事情により仕事の話はあまり書いてこなかったが、そろそろ書いてもいい頃だろう。
10月18日、磯崎アトリエの担当者として、ここ5年近く取り組んできた中央美術学院の美術館がオープニングを迎える。過去の現場写真を眺めていると、ローカルや職人達との思い出が蘇る。といってもほとんどが怒鳴ったり怒鳴られたりした記憶。今でこそお互い笑って話せるが、まさに悲喜こもごもだった。
書いたスケッチや図面の数は、おそらく数千枚になると思う。数千カ所を検討したのではなく、全ての箇所で何度も試行錯誤したためにとてつもない量になってしまった。
「これ、できる?」
「うん、もちろんできる。簡単だ」
「やっぱりできない」
「なら、こうすればできるはずだ」
「やってみる」
「やっぱりできない」
そんなやり取りを幾度繰り返した事か。ローカルや施工の担当者は、辛抱強く付き合ってくれた…最後は「日本人建築家の仕事は二度とやりたくない」と笑いながら言われたが。
中国を代表する有名大学の付属施設、アートについて理解のある施主。ローカル達にも「こんなに恵まれた仕事は日本でもない、中国の限界を知る一生に一度のチャンスだ。粘れるだけ粘ろう」と言い聞かせ、似たような図面を何度も描き直させた。
しょっちゅう施主の元を訪れ、説得を試みた。粘りすぎて、施主から「東福、お前はよく頑張った。それは分かったから頼むから止めてくれ」とストップが入る事もしばしばだった。とはいえ、理解のある施主であることは確かで、僕の提案はかなり受け入れてもらえた。
正直、構造が上がり始めてからも、この建物は果たして完成するのだろうか?と半信半疑だった。工事がだいぶ進んで内装に入った頃、手持ち無沙汰の職人達がボーッと天井を眺めているのを見て、やっと、これは良い建物になる!という確信を得た。
4年もの間、中国的システムに対して愚痴りながらも、それを心のどこかで楽しんでいた。まあ、そのくらいの気構えでなくてはココでの仕事はできない。来たばかりの頃は、中国の建築生産のシステムが分からずにとまどうばかりだったが、試行錯誤を繰り返すうちに、中国でクオリティーの高い建物を作るコツが掴めてきた気がする。次からはもう少し効率的に仕事ができると信じたい。
いろいろ思い出されるなぁ。
…と、センチメンタルな気分に浸りたい所なのだが、オープニングが終わって一区切り付くまではまだまだ気の抜けない状況が続く。格好悪い家具を発注しないように目を光らせたり、雑誌の取材対応をしたり…まだ仕事は残っている。
つーか、オープニング本当に間に合うの?って状況なんですが…
雑誌発表の状況はこちらで紹介しています。日本の専門誌での発表はもう少し先になりそうです。最も一般向けだと思われるSANKEI EXPRESSの記事はこちら。
投稿者 tofuku : 06:21 PM | コメント (5)
September 30, 2008
計画は壁の上で

何度か登場させてきたこの写真。flickrに載っけていると、時々「使わせて欲しい」という連絡がくる。
実は2006年から、イギリスの総合建築/都市エンジニアリング・コンサルタント企業、Arup内のプロジェクトチーム"foresight"が編集した教育ツール"Drivers of Change"にも使われている(一気に書いてみたが、長い…)。
教育ツールといっても見た目はただのカードセット。未来の都市/建築/生活にまつわる問題点や疑問が一枚づつカードに分けられ、表には写真と概要が、裏には関連する図表とともに解説されている。企業の戦略立案、ブレインストーミング、研修などの使用のために開発されたとか。ちなみにこの写真は、「アーバニゼーション(都市化)/交通」の項にある。
最新版の"the rainbow set"を1セット送って貰ったが、内容はさすが頭脳集団Arupの面目躍如といったところ。デザインもカッコ良く、企業エグゼクティブの机の上の飾りとしてもグッド(おいおい)。
実物が手元に来ていたのでとっくに売られているものと思っていたが、発売は2009年春からなんだそうで。出版元は(たぶん)スペインのGGことGusutavo Gili社から。
で、カード。
アメリカのサスペンス・ドラマ、例えば24とかプリズン・ブレイクを見ていると、壁の上に写真やらスケッチ、新聞記事、表、などなどを壁一杯に貼って、それらを動かしながら計画を練るシーンがしばしば出てくる。日本でも、「仕事術」系の本では、必ずと言っていいほどカードやポストイットを使った情報整理法が紹介されている。断片的な情報を小さな紙切れに入れ、それらを組み合わせて新しいアイディアを得ようとするのは、そんなに新しい話ではなくて、例えば「知的生産の技術」で梅棹忠夫氏が紹介、1970年代の日本で大ヒットした「京大カード」や「スクラップブック」なんかもそうだろう。
そういや、生前の父親の書斎も新聞の切り抜きやカードで埋め尽くされていた…。並べているのはついぞ見なかったけれど。当時の「知的になりたいヒト」たちはこぞってカードを買い求めていたらしい。
最近のオフィスでは、色んなものが貼れるように、壁を全面コルク貼りとしたような会議室も見かけるようになっている。そんな「紙切れ並べ型」のプロジェクト・スタイルが復活して来ているのは、コンピュータの浸透が大きいんだろうな、なんて思っている。僕だって、今話題のコンピューターと今話題のインターネットを使って、世界の片隅で今話題のデザインをやっている一人だけれど、コンピューターというやつは一覧性に欠けていてどうにも具合が悪い。一度に全部ひろげて見たい時ってあるでしょう?その欲求不満が、オフィスの壁へと向かって行っているのだろう。
いま自分のオフィスには大きな壁はないけれど、ゆくゆくは、なんでも貼れて、なんでも書ける大きな壁が欲しいなと思っている。
いつのことになるやら…
投稿者 tofuku : 06:59 PM
September 26, 2008
中国の真空管アンプ事情

半年を費やした中国オーディオ調査、今日でひとまず完結、の予定。
アンプとスピーカーが一通り揃い、ホクホクしながら聴いていたら、アンプの調子が悪くなってしまった。どうやら、酷使しすぎたのと、変圧器にトラブルが発生したのが原因のようだ。週末はプロのレコーディング・エンジニアがスピーカーを試聴しに来てくれるというのに…というわけで、今のアンプは今後ゆっくり修理/改造をすることにして、タフな中国製アンプを新たに購入することにした。予算は思い切って2万円。オーディオの値段としては安いかもしれないが、中国では平均月収にも匹敵しようかという大金だ。金銭感覚が中国化している僕にとっては、まさに清水の舞台から飛び降りる思いである。仕事にフィードバックできる可能性も皆無で、自分を納得させる理由も見つからないし。
「世界の工場」中国にとって、作っていないモノなど最早ない。高級オーディオも然りで、だいたい、ケーブル1本にお金持ちが数百万出してしまう利益率の高い世界を、商売に目ざとい中国人が放っておくわけがない。
前にも書いたように、中国ではいまだに真空管を製造している。有名なのは元国営企業の「曙光」、オーディオ専門で成功した「Full Musuc / 天津」、イギリスでチェックする事で高い付加価値をつけている「Golden Dragon」など。電化製品の生産が盛んな中国の南方では真空管アンプも沢山作られている。「AudioSpace」、「Cayin」などは特に有名で、日本にも輸出・販売されている。ただし、中国国内の数倍の価格でね。他にも、日本に代理店を持たないアンプメーカーが乱立している状況のようだ。
アンプメーカーがなぜ乱立するのか、といえば、「基礎技術が低くて済む」というのもあるだろう。高精度のマイクロチップがあるわけでもない。高い工作機械が必要なわけでもないし、クリーンルームだって必要ない。作ってみて、音がイマイチだったらトライ・アンド・エラーで改良してゆけば良い。そして、その作業に必要な人件費は安い。中国は、「そんな高い技術力がなくても、マンパワーをかければなんとかなりそう」な製品にめっぽう強い。このニッキで何度か取り上げた機械式腕時計もそう(「なんとかなって」いない製品もかなりあるが)。自分自身の設計にも、その中国の特性を生かそうと絶えず考えていて、最近の「木とプラスチックのパーティション」もその一つである。
北京の、女人街というところにある「中古電気市場」。薄暗く湿っぽく、そして熱気に満ちているアジアン・バザールの中に、真空管アンプを売る4畳半程度のブースがある。壁にはカラヤンとケニーGのドでかいポスター。店主のオバさんは、その片隅で自作のアクセサリーを売っている。友人達と一緒に、オバさんに片っ端から試聴させてもらい、悩んだ末にこれに決めた。

EL34という真空管を使ったA級プッシュプルアンプ、1980元(約3万円)。勢いに乗って予算オーバーしてしまった。メーカーはYaland(雅燃)といって、まだ世界展開の途上にあるようだ。余裕を感じるパワー感。造りもしっかりしており、デザインも悪くない。そして、中国では珍しい箱付き・1年の保証書付き!驚いていたら、オバさんに「ウチは正規代理店だからさ!問題あったらいつでも持ってきな!」と自慢された。なんちゅうショボい正規代理店だ…
オバさんは、よく日本人のオジさんが来て、いくつもアンプを買ってゆくよ、と言っていた。オーディオファン/音楽ファンの方、中国ミヤゲに真空管アンプはいかがでしょう。日本で買うより明らかに安い。但し、たっぷり試聴して納得してから買いましょう。
そして、真空管アンプは重い事を忘れずに。買ったアンプは17キロもある。エコノミークラスは20キロまでで、まあ8キロくらいのオーバーなら多めにみてくれるから…事前に計算しておいたほうがいい。
投稿者 tofuku : 09:40 PM
September 24, 2008
構想2ヶ月、製作3ヶ月
真空管アンプで挫折してしまったのは今年の春頃。いや、挫折というべきでないな。転進したというべきだな…大本営発表みたいだけれど。
転進先はバミューダ沖ではなく、これ。

スピーカーの設計・製作だ。スピーカーというのは、ユニット(磁石がついてて電気で震えて音を出す部分)と、エンクロージャー(箱)の2つからなる。そして、その箱の形や素材が、音質に大きな影響を及ぼす。ユニットの方は余程のマニアでなければ作れない精密機器だけれど、箱の方ならなんとかなりそうだ。
「日本スピーカー自作界」は、なかなかに奥が深い。音楽/オーディオ評論家の長岡鉄男氏、という方が最も尊敬されていて、彼は生涯に600種類のスピーカーを設計・製作したという。遺された図面や著作は今でも書店で買える。パーツは、「日本スピーカー自作界のメッカ」こと秋葉原のコイズミ無線に揃っている。日本に帰った時に一度行ったのだけど、仕立ての良いスーツをピシッと着た、会社ではそこそこ高い地位に居るであろうオジサマ達が数人居た。日曜大工がてらスピーカーを組むんだろうか。
長岡大先生の著作を参考に、設計を始めてみると、これがまた結構分かりやすいし楽しい。音を形にするというんだろうか、音の流れや反射を考えながら箱の内部空間を設計するのはなんだか建築的な作業でもあった。職業柄、空間を図面化するのは得意である。生まれて初めて建築をやっていてよかった、と思った。冗談です。
一緒に仕事をしていた内装屋の親方を「内装なんかやっててもこの先儲かんないぞ!スピーカーの箱なんかどうだ!下手すりゃ箱だけで数万元で売れたりするんだぞ!」と、まあ嘘ではないけれど一般的でもない例を引っ張りだしてだま説得し、2種類のエンクロージャーを作ってもらった。「現場がある時についでに作るから」と2ヶ月以上待たされた。

上の写真はバックロード・ホーンと言うタイプ。中にホーンのような音道を組み込んである。下のものはバスレフというタイプ。作ったばかりの時は中低域がモコモコしてしまっていたが、スタイロフォームの塊を中に入れたり、中のグラスウールの位置を調整するうちに改善されてきた。いろんな人に聴いてもらったけれど、下の方が評判が良い。僕個人は上の奴を気に入っているが、確かに少々クセがある。
まあどちらも、総予算2−3万円で作ったスピーカーの音とは思えないのは確か。そこらのオーディオセットには負けない…と思うんだけど。
投稿者 tofuku : 06:30 PM | コメント (3)
September 23, 2008
ついに、そっちへいってしまったか。
東京に居る頃は毎週のようにCDなりLPなりを買い込んでいたが、中国生活が長くなるにつれ、帰国時にもあまり買わなくなった。大抵の曲はiTunesで買えてしまうし、多少マニアックな曲も「日本が世界に誇る音楽バイヤー」N氏がサンプル盤をくれる。今の僕のiPodの中は貰ったPヴァ○ンレコードの曲と、iTunesで買ったメジャー曲がひしめいている。
で、最近の僕の音楽生活はドコに向かっているかというと、これ。

真空管アンプ。最近は、日本でも真空管が静かなブームなんだそうで、僕自身もそれに乗っかってしまった。なんで今真空管なのか?は日本の流行ウォッチャーの方に分析を任せるとしても、自分の個人的な理由もある。「いま、(一応)共産圏にいるから」だ。
「静かなブーム」のおかげで、今でこそ真空管を見る機会は増えているけれど、ちょっと前まで一部の好事家だけが持っている「高級オーディオ」の代名詞のような存在だった。先進国がトランジスタに移行し、真空管の製造を止めてしまう中、シコシコと作り続けていたのは共産圏の国々だけだった。今でも作っているのは、中国、ロシア、ポーランド(?)それくらいらしい。
って事は、高級オーディオが中国だったら安く作れるってことじゃん!と思い、とりあえず手始めにキットでも作ってみるか、とエレキットのTU-870というモデルを購入して北京まで運んだ。

中学生以来のハンダ付け。ヘタクソ。2万円弱と、このキットは素晴らしく安い(最近廃番になり、25,000円程度の後継モデルが出た)。僕は即席のオーディオファンなので、音の善し悪しはイマイチよく分からないが、特に不満はない。一家に一台の名器といってもいい…かも。
完成後、中国でどうやって作るか考えるべく、いろんな本に目を通してみたけれど…全然分からない。高校生の頃、物理の中でも特に電気が苦手だった事を忘れていた…コンデンサーとか、電子が貯まって帯電するのは分かった、でもなんで帯電しなきゃいけないのか意味わかんない!とか思っていたのを思い出した。
投稿者 tofuku : 08:54 PM | コメント (3) | トラックバック
今月の草場地

9月10日から一週間ほど東京へ戻っていた。いくつかの打ち合わせをこなし、いくつかのパーティーに参加し、家族や友人と食事をし、ビザの申請や各種料金を払い込み、北京では買えないガジェットを買い込み、20日から始まるMizuma & One Gallery展覧会の進行状況を見届けるべく北京に舞い戻る。
ジュン・グエン=ハツシバさんの作品。上部に浮かぶ無数のペーパー・オブジェクト(1000個以上あるという)は、ヴェトナムの伝統的な副葬品。お盆の時等に燃やし、黄泉の国の死者へ贈るという。部屋は薄暗くされ、壁は全てブルーに塗られ、まるで海底のよう。床に置かれた鏡面仕上げの地球儀には、覗き窓があり、覗くと、世界地図の上に数字が書かれているのが見える。世界各地で起った天災や大量殺戮の座標・時間がプロットされているという。

もう一つの作品。これもまたヴェトナムのお盆グッズが参照されている。走馬灯のように、なんて言うけれど、灯籠やら蝋燭に死のイメージを重ね合わせるのは世界共通だ。
力の入った展覧会なので、オープニングに来れなかった方も期間中に足をお運び下さい。

近くの北京ファインアーツでは名和晃平氏の展覧会。この部屋の設計は迫さんがやったという。東京的な感覚をココまで持ってこれる力量はさすが。
草場地には、オリンピック前までにさらに4−5軒のギャラリーがオープンしている。

その一つ、リー・スペース。学校を卒業したばっかりの作家/または学生の作品に力を入れている。うねった床を作ってしまうという力の入れようだが、職業柄、細かい所に目がいってしまう。なんか文化祭みたいだよなぁ、と思ったが、ギャラリストの人達の「若手の作品を壁にそのままかけたのでは、もっとみっともない。多少クオリティーは低くてもパワーを感じさせる展示をした方がいい」との話を聞き、なるほどと思う。

北京空間という新しい画廊のそばで見かけたインスタレーション(?)。雨が降ると面白いことになるかもしれない。
投稿者 tofuku : 04:59 AM
September 18, 2008
ジュン・グエン=ハツシバ "The Globe Project in Beijing"展のお知らせ
9月20日(土)より、北京/草場地のMizuma & One Galleryにて、ジュン・グエン=ハツシバ氏による開廊二回目の展覧会"The Globe Project in Beijing"が催されます。私共は、グランドオープニング時に行った内装の設計に引き続き、メイン・ホールを一杯に使った大型インスタレーションに関する技術的なサポートをさせて頂きました。
オープニングレセプションは、9月20日(土)15:00ー17:00に予定されています。東福も現地に居る予定ですので、皆様お誘い合わせの上、是非いらしてください。
詳しくはこちら。
投稿者 tofuku : 06:34 PM
September 05, 2008
これも終わっちゃってますが。

入口に掲げられた開幕式のコンセプトドローイング。北京の地図の上に巨大な足跡が点々と…開幕一週間前に完成したばかりとか。
9月2日まで、中国美術館で開催されていた蔡国強"I Want to Believe"展。ニューヨークのグッゲンハイム美術館で行われた個展の巡回に、オリンピック開幕式の花火パフォーマンスを題材にした巨大なドローイングを加えた展覧会。会期が二週間そこそこしかなく、非常に短い。オリンピックにぶつけるためにかなり無理をしたんだろう。
中国美術館は中国でかなり権威ある美術館だが、設備がとても古く、空間も現代美術向きではない。ベニューに問題はあるけれど、展示のヴォリュームはかなりのもので、作品は一度見てみたかったものばかりだった。展示の仕方がちょっと乱暴なのは残念だった。少なくともこの美術館のテカテカの大理石の床はなんとかして欲しい。

レセプションの模様。一番手前が蔡氏。日本で活動した時代もあり、日本語も堪能…らしい。同行させて頂いた方は、蔡氏とは古い知り合いだったが、それでも簡単な挨拶くらいしかできなかった。だから、僕は未確認。




その後、東京とNYからいらした美術関係者の方に同行して、北京ダックの有名店「大憧」へ。席が空くのを待っている間は、ダックを焼いている所を見る事ができる。僕はこの店の「白菜と栗のサフランソース」が好きで、これは北京一旨い料理だと思っている。ダックのスープはクセがあり、美味しいものではないけれど、それが栗と白菜と合わさると非常に上品な味になる。この料理を食べている間、皆が無言になってしまうほどの逸品。
北京で食べるならコレですよ。
投稿者 tofuku : 08:38 PM | コメント (0) | トラックバック
September 03, 2008
終わってだいぶ経つけれど

部屋から見えた閉会式の花火。
このところ、北京は非常に天気がいい。遠くまで見渡せ、ネオンってこんなに鮮やかな色をしてたのか、と思わず感嘆してしまうほど。五輪期間中は曇天が多く、霧もよく出ていたが…。オリンピックの前から、郊外の工場は停めるわ、交通も規制するわ、建設工事もストップするわと大気汚染対策をバンバンやっていた北京だが、オリンピックが終わってやっと功を奏したのか。どうせやるなら、もう少し早く始めとけばよかったかもね。
北京人の間でも、そろそろオリンピックの話題が落ち着き始めた感じがある。色々な問題を抱え込んだ国で開催されたというだけあって、色々なネタを振りまいてくれたオリンピックではあったけれど、どのメディアもネタを出し尽くし、既に総括を終えている感じだ。けれど、メディアの報道では、たぶんあんまり伝わっていない事がある。すごく単純な事。
オリンピックは結構楽しいよ、ということ。
現場は止まっちゃうわ、移動は不便だわで、僕も始まるまではとっても憂鬱だった。でも、いざ始まってみると、都市全体に活気が漲る。「スポーツの祭典」の本当の意味が分かる、カーニヴァル状態。麻布十番まつりだって、町中が人でごった返して不便きわまりないけれど、遊びに来ている人はあんまり文句言わないでしょう。
立場的に、エネルギーの浪費だとか、都市問題の先送りだとか、アスリート達が主役なんだからとか、チベットはどうなっているんだとか、顔をしかめながら言わなきゃ行けない事は色々ある。けれど、それでもやっぱり、祭りは楽しい。アスリート達が夢見るのもよく分かる。
東京オリンピックだって、もう40年も前の話だ。現在、日本の働き盛り以下の年代には、オリンピックを経験した人は殆どいないという事になる。あの、開会式のカウントダウンとともに街全体が高揚感に包まれて行く感覚は、ぜひ体験して欲しいなぁと思う。
まあ、僕も今回初めてだったので、2016年に東京オリンピックが開催されたとしても、どうなるかは分からないのだけれど。北京の「エネルギー浪費型」オリンピックへの反省から、おとなしいエコなスポーツ大会になっている、というのも十二分にありえる。
ところで。何度もココで書いて来たけれど、北京の9月は本当に素晴らしい。というより唯一良い季節だと言ってもいい。大気関係の規制はパラリンピックが終わる9月20日まで続く。今年の秋は一段と素晴らしいものになりそうだ。来るなら今ですよ。
投稿者 tofuku : 08:18 PM | コメント (3)
August 18, 2008
サッカー見て来ました
くれーなずーむまちのー。

ここ数日の北京は、晴天に恵まれている。湿度も下がって非常に過ごしやすく、秋の雰囲気さえ感じる。オリンピックが終われば、一気に秋に突入するんだろう。

土曜日には、S事務所のHさんに誘って頂いて、オリンピックのサッカー男子を見に行って来た。日本戦ではないけれど、イタリア対ベルギーというカード。「東麻布で彼にサッカーを観させたら右に出るものは居ない」と評判の竹森君から、「なんか、イタリアの10番が注目らしいですよ、メンバーは全然知らない選手ばっかりです」という、特に役に立ちそうもない事前情報を仕入れてから向かった。
会場は1959年に人民共和国十周年を記念してられた「十大建築」の一つ、工人体育場。十大建築は、共産主義革命の勝利を体現すべく、全てが建設決定から竣工までが一年以内という驚異的なスピードで建設された。だから、設計も大味だし施工も荒い。逆に言えば、「短期間でそれっぽいものを作る」テクニックは随所に見られ、面白い建物とも言える。

監視員達は等ピッチに並んでおり、どんなに試合が盛り上がろうともずうっと観客席を凝視している。無駄な動きが一切なく、おそらく解放軍から派遣された人達だと思う。
中国人の観戦マナー問題は、日本のメディアで色々報道されているようだ。バドミントンのオグシオ戦での応援を取り上げた夕刊フジの記事。スマッシュのかけ声「シャー!」に「殺」の文字をあてはめ、「殺せ!殺せ!である。とても五輪とは思えない光景だ」と結んでいる。うーん、僕は現地に居た訳ではないし、中国でバドミントンを見た事がある訳ではないので、確かな事は言えないけれど…どうだろう?ちょっぴり飛躍してる「釣り記事」かもしれないなと思う。ローカルにも聞いてみたけれど、それは単なる掛け声じゃない?と苦笑していた。まあ、僕も彼女も、その一方で「でも調子に乗ってやりかねないよな…」、とも思っている訳だけれども。
日本での報道を見ている人達にとっては、中国は何かにつけて日本を敵視している、と思うかもしれないが、僕はそのあたりに少々温度差を感じている。中国はそこまで日本の事を気にしていないのではないか。ほら言うじゃない、「愛の反対は無関心」だって。中国での報道を見ていると、日本はワンオブゼブの外国に過ぎないのではないか、と思えてくる。圧倒的に優位なスポーツの世界なら尚更だ。
とはいえ、サッカーはちょっと違うようだ。中国人はサッカー大好きなのにも関わらず、ナショナルチームは国際的にはイマイチどころか、日本にすら敵わない。そういった苛立ちが中国人観客のマナーをますます悪いものにしているようだ。日本戦では、訳の分からない所でブーイングをしたとかで、親中派の日本人の友人も憤っていた。
中国のサッカーチームに対する苛立ちは報道にも現れているようで、先日は、テレビやラジオで「中国対ブラジル戦を観戦するべきかどうか」という内容で盛り上がっていたそうだ。「どうせ勝てないし、万一勝っても決勝トーナメントに行ける訳じゃないので見なくてよい」とか、「この先ワールドカップもオリンピックも出れないだろうから見ておくべき」とか…。どちらにしても中国人らしい諦観と合理主義だ。残酷と言えば残酷。

PKで一斉にカメラを向ける観客達。あとで良い写真や映像がメディアで見れるんだから頑張って撮らなくてもいいのに…。という僕も彼らにカメラを向けている。
試合は非常に面白かった。開始20分でベルギーがレッドカードを食らってPKで1点失点。これでイタリアのフルボッコかと思われたが、ベルギーは10人で大健闘。3点を挙げて3ー2で勝利した。

喜ぶベルギーの選手達。
投稿者 tofuku : 04:01 PM
August 16, 2008
バレーボール見て来ました
スポーツ観戦のチケットというのは、大抵そんなものなのかもしれないが、オリンピックのチケットの在処にはかなりのバラツキがあるそうだ。会社の接待用に大量に買い占めた末に大量に余り、さして興味の無い社員に配っている所もあれば、欲しくても手に入らず、ネットオークションで何十倍もの価格で落札している人もいる(なんでも、開会式のチケットは最高で30万元=約450万円で落札されたとか)。ある所にはますます集まり、無い所には全然ないという、収穫逓増の法則がはたらきまくっている。完全な市場経済の国になっているな、中国は。
僕は、人気競技を狙いすぎたせいでチケットの抽選をことごとく逃してしまっていて、いいもんねー、テレビで観るもんねー、路上でマラソン観るもんねー、とイジケて居た。一枚もないので収穫逓増の法則もはたらきようがない。4年前から北京に居るのに一つも観れないなんて寂しすぎるなぁ、人気競技でなくてもいいから、せめて会場の雰囲気は味わいたいよなー、と思っていたところ、友人に「チケット余ったから行く?」と誘われ、二つ返事でOKしてウキウキ行って来た。幸い、スタッフ達には休みを取らせている日だった。
朝、タクシーを広い会場へ。期間中はタクシーが激減しており、なかなか拾えず、近くに並んでいた人と相乗りする。運ちゃんと3人でオリンピックの話をワイワイしつつ向かう。運ちゃんは英語が驚くほど達者で、オリンピック期間中はかなり荒稼ぎしているらしい。昨日はアメリカ人3人を乗せて万里の長城へ連れて行き、600元もらったと自慢していた。彼らも幸福、ワシも幸福、と言っていた。そりゃ幸福だよ、相場の倍ぼったくってるんだもの。
女子バレーボール、ロシア対アルジェリアとブラジル対カザフスタン。全国ウン千万の女子バレーの方達には申し訳ないけれど、どのチームがどのくらい強いか、全く分からない。ルールもイマイチで、リベロというスパイクを打っちゃいけない人が居る、という位の知識しかない。

会場は、北京理工大学という大学の中の体育館。学生ボランティア達が夏休み返上で観客の誘導に精を出している。「いらっしゃいませ」「こちらへどうぞ」「ご協力ありがとうございます」と、今まで聞いた事も無いくらいの、清く正しく美しい中国語で話しかけられる。誇らしげで爽やかなスマイル。一人っ子政策の影響で自信だけはイッチョマエな大学生ばかり相手をしてきた僕には、驚愕だった。あの小生意気な学生達はどこへ!
やればできるじゃないか、中国!

大会マスコットと写真を撮るべく、行列をする人々。ボランティアが列を作らせているとはいえ、キチンと並んでいる事に感動。これが一昔前だったら、人々が詰めかけて大混乱、後には傷だらけで泥だらけのキグルミが残されていただろう。
やればできるじゃないか、中国!
会場。けっこうコジンマリしている。学生ボランティア達は、会場にウェーブを作らせたり、フラッシュを使わないで下さい!と指示したりと忙しい。

ロシア対アルジェリア。右端に居るロシアのリベロは、確か身長が174センチと言っていた。他の選手がデカイ!2メートル以上の選手が何人も居た。デカイ!とかカワイイ!とか頭小さい!とか、バカ丸出しの解説しかできなくて申し訳ないが、ロシアの選手の方は色の白さで遠目には良く見えるが、実は可愛さで言えばアルジェリアの方が上なのでは?と、試合とは何の関係もない事をユルユルと考えていた。
観客は多くが中国人。中国の試合ではないので、かなりピースフルな雰囲気。同じ旧共産圏だからか、ロシアを応援する姿が目立った。いや、中国はいちおう今も共産圏か。
スパイクが自分の顔に当たったら首がモゲるだろうな…とか、キン肉マンの超人オリンピックのような超人達の戦いを想像していたけれど、端から見ている限りは鼻血か鼻骨骨折くらいで済みそうな感じだった。
試合結果はロシアのストレート勝ち。この日行われた予選6試合のうち、5試合がどちらかのストレート勝ち(日本はキューバにストレート負け)。国によって実力差大きなスポーツなのね。

ブラジルは、スパイクがフロアに突き刺さる感じで、練習のときから明らかに強そうだった。体格も全く違う。試合が始まっても実力差は歴然。カザフスタンは2セットを連続して落としてフルボッコ状態で、だんだん可哀想に思えて来た頃、自分のすぐ前に座っていた中国人の若者がカザフを応援しはじめた。オリンピック会場には「マナーの良い中国人」を演出する為に仕込みの応援団が用意されているらしいが、彼は両親と見に来ていたので仕込みの可能性は低いと思う。
彼をきっかけに、会場全体はカザフの応援一色になり、ブラジルの応援団が逆に可哀想になるくらいの「加油!カザフ!」の大合唱。当のカザフの選手達もどうして自分たちが応援されているのか分からず、頭の上に大きな「?」が浮かんでいるような状態だった。
中国人のメンタリティーが分かって来た僕の推測では、それはたぶん
・旧共産圏のよしみから
・判官びいき
・中国人は北方の白人女性が好きだから
・折角チケット買ったのに、このまま終わったのではつまらないから
大方そこらへんの理由からだろう。特に最後の可能性が大きい。
とにかく、中国即席応援団のおかげで、第3セット目のカザフはデュースまで持ち込む大健闘。負けてしまったけれども、観客達も満足そうだった。

セットの間には急遽養成されたチアリーダー達が。いまいち揃っていないのが微笑ましい。
投稿者 tofuku : 12:22 PM | コメント (4)
August 13, 2008
今年の麻布十番祭りは!
さーて、麻布十番まつりの季節が近づいてきました。今年は、8月23日(土)の午後、事務所開放をやります。
驚くなかれ!!今回は北京オリンピック特別企画!!
23日午後には、野球の決勝と陸上が予定されています。なんと、私共はオリンピックに沸き立つ北京、しかもメイン会場である「鳥の巣」の近くに現地報道センターを設置し、現地の生の声を拾いつつ、今話題のインターネットを駆使して新次元の実況を行います!
報道センターの位置はココ!

(矢印は合成です。決して花火ではありません)
なんだよー、北京のお前の家でスカイプ繋ぐだけじゃんかよ、いいトシして何はしゃいでるの?とか言ってるキミ!出て来なさい!
そのとおりだ!!
…ま、一緒にオリンピック気分とお祭り気分を楽しみましょう。
東京での対応は竹森の方で行いますので、詳しくは彼のブログにて。
投稿者 tofuku : 05:47 PM | コメント (2) | トラックバック
CG処理…
始まる前から予想された事だけれど、色々噴出してますな。
オリンピックの開会式の花火の空撮映像。その殆どがCG合成だった、というニュースが。今見返してみると、特に発射の瞬間がうさんくさい。あの映像を見ながら、「あれ?北京の上空ってもの凄い航空管制が敷かれてるんじゃなかったっけ?地対空ミサイルで撃墜されないの?」という疑問が一瞬脳裏をかすめたけれど、まさか合成映像とは思わなかった。
オリンピック関連のCGの殆どを製作しているのはクリスタルCG(水晶石数字科技有限公司)という、中国最大のCG制作会社だ。この会社、北京の有名プロジェクトのパースやムービーは殆ど作っているので、建築関係者にはかなり名が通った存在だ。テレビCMなどにも仕事が多く、日本で目にする中国産CGの殆どはこの会社のモノだと思っていい。
とってもとっても儲かっているらしく、空港にデカデカと広告があったりする。また、自社ビルはCCTVの設計でおなじみ、オランダのOMAに設計を依頼しているそうだ。確かにココのCGは格好良く、一度は頼んでみたいなぁ…と思っているけれど…高くて手がでない。せいぜい、この会社から独立して細々とやっているレンダラーに頼むのが関の山だ。
話はそれたが、件の映像も、おそらくクリスタル製だ。
このニュースがウェブ上に出た時、僕が開会式で大興奮していたのを知る人から慰めの言葉(?)を頂いた。
・国威発揚のためにはやむを得ない(ついでに女の子の口パクも)
・レニ・リーフェンシュタールの「オリンピア」だって、市川崑の「東京オリンピック」だって、別撮りだらけじゃん。
って、慰めになってるか?2つ目にいたっては、記録映画であってライブ中継じゃないし…。そもそも僕を慰める意味がよくわからない。
まあでも、有り難うございます。
ちなみに、勘違いしている人が居るみたいだけれど、足形の花火は実際に打ち上げられている。Youtube上にもメイキング映像(の番組?)が上がっていて、準備や練習の様子を見る事ができる。
花火を担当したアーティスト、蔡国強の大規模な個展が、19日から中国美術館で始まる。CG処理は彼の指示ではないだろうけれど、展覧会の前にちょっとミソがついちゃった感じだなぁ…
投稿者 tofuku : 04:37 PM
August 09, 2008
始まってしまいましたね
北京のあちらこちらに「オリンピックまであと何日」の表示板がある。最初に来たときは余裕で1000日を超えていたのに…。感慨深いものがある。

先週末、韓国の設計事務所、IROJEの北京代表の趙さん、松原事務所の勝田さんと飲んでいた時に、来週の開幕式をみんなで見ましょうよ、という話になり、IROJEの事務所を提供してもらって「開幕式を観る会」をすることになった。飲みながら話をしているときには「ロシア人のダンサー雇ってさぁ!」なんて盛り上がっていたのだけれど、自分にモンゴル出張の予定があるのをすっかり忘れていた。その上、出張から戻るなり風邪でダウン…。趙さんと勝田さんに準備の殆どを頼りながらも縮小に縮小を重ね、最終的には「ゆるゆる」でコージーな感じで楽しみましょうよ!という会になった。でもでも、突然の誘いにも関わらず20人くらい集まってくれて、楽しく観る事ができた。皆さん有り難うございました。
2年程前、北京のバーで、開幕式の仕事をしている、というデザイナーと話をした。チャン・イーモウを頂点として、セクション毎に世界各国の演出会社が関わっているんだそうだ。香港出身で、イギリス系の会社を手伝っていた彼女は、どんな内容かはもちろん言えないけれど、歴史に残る凄い開幕式になるわよ、とだけは教えてくれた。
政府高官へのプレゼンが当日になって突然セットされたり、逆に突然キャンセルされたりで、とっても大変そうだった。チャン・イーモウは政府の言う事を良く聞いているわよ、そういった意味でも凄いヒトよ、とも言っていたので、「この部分はあんまり良くないな、後からムリヤリ突っ込んだんだろうなぁ」とか想像しながら開会式を観ていた。中国の仕事、とりわけ政府絡みの仕事は、政府高官からの横槍が度々入り、それに対応するのに膨大なエネルギーを必要とする。いくら国を代表する映画監督と言えど、場所が場所だけに政治圧力と無縁では無かっただろう。それをあの一連の演出にねじ込んでしまうのだから大した力量だ。
しかしまあ、凄い演出だった。北京全体を使ったダイナミックな花火。蔡国強(ツァイ・グオチャン)という人は、20年程前に火薬の爆発を使って万里の長城を延長する、というアースワーク的なパフォーマンスをやったくらいの人なので、デカい事やるだろうなぁとは思っていたけれど、分かっちゃいたけどやっぱり凄い。
エンターテイメントとしても、アートとしても、そしてもちろん、中国自体のプロモーションとしても一級だと思った。中国の数のパワー、テクノロジー、歴史…がいかんなく注ぎ込まれている(しかもお得意のワイヤーアクション付き!)。現代的に洗練されたマス・ゲーム!
このところ、海外メディアの報道内容が単なる中国批判を通り過ぎ、なんでもかんでもネガティブな内容に持って行こうという奇妙なバイアスがかかっている状態が続いていた。中国は問題だらけの国なのは事実で、問題をあげつらえばキリがない。いくら中国の自業自得とはいえ、報道の優先順位に首を傾げる事が多かった。
でも、このセレモニーに関しては、どのメディアもほぼそのまま放送せざるを得ない。中国は、バイアスが解除されるその僅かな一瞬を、最高のアーティスト達を動員してコジ開け、世界の視聴者に直接アピールする事に成功したのではないか。「文化」で革命を起こそうとしたくらいの国だから、アートの持つ力を利用するのはお手の物なのかもしれない。海外メディアの中国報道に対して感じていたモヤモヤが、スカッと晴れたような思いがしたのは、僕が中国人化してきている証拠なのかな?
地域によって格差はもちろんあるけれど、モノの生産に関しては日本の優位性はかなり少なくなって来ているように思う。残るはコンテンツ力だけれど…中国はコンテンツに関してもメキメキと力を付けて来ているのが、このセレモニーからもハッキリと感じられるだろう。日本が、本当に脅威を感じるべきなのはそこだ。毒ギョーザや段ボール肉マンも大事かもしれないけれど、そんなニュースばかりを見るのは、本当の「中国の強さ/怖さ」から目をそむける事にしかならない。中国を敵視するのは自由だけれど、敵なら敵をキッチリと見極めよう。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だ。
おいおい結局、孫子かよ。
正直、今までは外国の教育を受けている、もしくは外国人である、というだけで仕事ができている所があった。これからは、中国の凄まじい発展をどうキャッチアップしていくか、というのが重要になってくるなぁ。色々考えさせられた。

誰かの国の選手団が入場するたびに乾杯。すっかり二日酔いになってしまいました…
投稿者 tofuku : 10:46 PM
June 27, 2008
労働者街
ユル―い内容で書こうと思っても、なかなかそうはならないな。ここは、何もかもが政治問題化してしまう国。
北京の人口1700万人のうち、約4分の1の450万人が地方からの出稼ぎ労働者で、そのさらに半分の200万人がいわゆる「民工(ミンゴン)」とよばれる建設業に従事している人たちだ。市中心部の巨大開発やオリンピック関連施設の現場で働いている人たちは、現場そばの仮設宿舎で生活することになる。この人たちも、オリンピック前の「浄化」施策によって、7月下旬から北京の中心部から退去させられる。「オリンピック中はテロが起こる可能性があって、危ないから」などと言いくるめられ、郊外に移動させられるらしい。なんともひどい話だ。「発展途上国」だと言い張っているのだから、現状をありのままに見せればいいのに…と思うが、中国のメンツがそれを許さないらしい。
7月1日から北京市中心部はトラックが通行できなくなる。さらに、20日以降は工事ができなくなる。オリンピック期間中に北京を離れる「民工」も多く、その数は40-50万人と見積もられている。オリンピック直前には、年末年始とは違った、別の民族大移動が起こるはずだ。
特定の工事現場を持たない人たち、例えば小型の物件をこなす内装職人たちが暮らす北京郊外の集落を訪れる機会があった。

中心にある市場。アジアそのものの風景。埃だらけのフロントガラス越しに撮ったので、必要以上に埃っぽく写っている。まあ、実際すごく埃っぽいが。

曲がりくねった路地。レンガの色を見る限り、最近できた集落のようだ。子どもたちが遊んでいる。ちょっと懐かしい風景。

いくつかの家族が集まって暮らしている。家は作業場も兼ねており、小さい家具をここで作ることもある。「おー、東福、よく来たね!」と西瓜を切ってくれた職人の奥様たち。ある職人は、上海から家族三人で出てきたという(だから、正確にはこの人たちは出稼ぎ労働者ではない)。彼女たちは専業主婦ではなく、夫と共に現場に赴き、職人達の食事を作ったり、現場の掃除をする。

決して豊かとは言えないが、暮らし向きはそれほど悪くない。かつては、「ブルジョア的なもの」として批判の対象となったペットを2匹も買っている。片方の犬をカメラで追っかけていたら、「こっちの方がキレイだからこっちを撮ってよ!」と笑っていた。カメラを向けると、老若男女みなはにかんだ笑いを見せる。
驚くのは、街行く人の表情が皆明るいこと。月並みだが、豊かさってなんだろう?と考え込んでしまう。ま、今の僕は、精神的にも物質的にも、そう豊かとは言えないので、余計な御世話かもしれないが。
時々、お客さんに付き合ってマッサージ店に行くことがある。1時間もの間、力いっぱい客を揉み続けるなんて、重労働以外の何物でもないのだが、働いている若者たちは、僕の拙い中国語に突っ込みを入れながら、キャッキャッ楽しそうに働いている。今はこんな仕事をしているけれど、必ず豊かな未来がやってくる。そんな希望が、彼らの表情を明るくしているのだろうな。
投稿者 tofuku : 10:43 PM | コメント (0) | トラックバック
June 26, 2008
オリンピック浄化
先週、東京、名古屋と、5日間程日本に戻っていた。中国の再入国は、ちょっとドキドキした。
これまでこのニッキでは、「オリンピックに向けて何々が進行中」みたいな話題を何度もしてきた。マナーの改善やら施設の整備、取締りの強化やら。6月に入ってから、こういった「活動」が一気に加速して来ている。海賊版DVDショップやら、日本人ビジネスマンを相手にした水商売の店、床屋の形をした違法な性風俗店(合法な性風俗店なんてこの国にはないが)が、当局の取締をうけてバタバタと店を閉めているという。注意したいのは、「閉めている」のであって「たたんでいる」のでは無いという点。オリンピックが終われば何事も無かったかのように商売を再開しそうだ。少なくとも大抵の北京人はそう信じている。
つい先日、打ち合わせの帰りにニセモノで有名な市場に立ち寄ったが、ここもキレイさっぱり浄化されていた。内装はキレイに作り替えられ、売り子のユニフォームは一新され、ニセモノどころか、「ギリギリ感」漂う商品すら店頭から消えている。以前、ニセモノブランド時計を売っていた売り子達は、今は洋服の生地やらアクセサリーを売っているそうだ。北京の妖しい場所が次々と消えて行ってしまうのは、やはり少し寂しい。子供の頃にはそこかしこにあった合成着色料バリバリの駄菓子が、次第に消えて行った事を思い出す。これが経済発展というものなのかな、とも思う。
不良外国人ーーホンモノの不良も居るかもしれないが、殆どは「政府にとって都合が良くない外国人」だろうーーが入国審査で拒否されるケースも増えているらしい。伝え聞いた話では、あるヨーロッパ人は、skypeでチベット問題について激しく語っていたところ、当局のブラックリストに載った、というような説明を受けたんだそうだ。中国のskypeは他の国のように暗号化されておらず、中国が誇る巨大ネット検閲システム「金盾」(またの名を「グレート・ファイアーウォール」)でも検閲可能という噂だが…でも、そこまでカッチリ管理できるもんなんだろうか?というより中国人がするんだろうか?
中国の政治のやりかたは、官僚が冷徹に政治をしている日本とはちょっと違って、細かい所は目をつむり、全体が崩壊してしまうような重大事のみを対処しつながらファジイにコントロールしてゆくような所がある。その政府がここまで徹底して北京の浄化に躍起になっている…彼らのオリンピックにかける気合いは相当なものだなぁと思う。
酒も女もニセモノも興味が無く、政治的な発言も活動も一切しない。そんな「完璧」な外国人じゃないと、オリンピックの時には北京に居られないかもしれないね、なんてローカルと笑い合っている。
というわけで、僕も今のところ国外退去にはなりたくないので、これからオリンピックまでは、これまで以上にユルーい内容になると思います。どうぞ御了承下さい。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2008年 07月号 [雑誌]
チベット問題やら食品騒動で、オリンピックを狙って出版された中国関係書籍の売り上げが伸び悩んでいるらしい。
投稿者 tofuku : 11:56 PM
June 07, 2008
のどか
先日、関わった仕事が着工するというので地鎮祭に呼ばれ、5時起きで行った。
敷地についたが、施主はおろか、ロッキングチェアでラジオを聴くオッサンを除いて、誰もいない。祭壇の準備もない。



のどかだ…。
投稿者 tofuku : 06:30 PM
May 17, 2008
唐山と地震と
1500キロも離れた北京で揺れを感じるなんて…想像を絶する。
北京からそう離れていない所に、唐山という都市がある。今から約30年前、ここをマグニチュード7.8の直下型大地震が襲った。犠牲者は発表によると24万人以上、本当はその倍は居たのではないかとの説もある。92%の家屋が倒壊(真偽の程は確かではないが、残った建物の殆どは日本統治下に建てられた物で、そのため当地では日本の建物に対する信頼が厚いと聞いた)。未曾有の大災害であったにも関わらず、中国政府は他国の救援を断り、被害を拡大させた。

唐山にある「抗震記念館」。「抗日」ではない。

市内には、震災を受けた工場等がそのまま保存されている場所がある。一部は公園として整備される予定だと言う。


記念館の中の展示では、中国国内から派遣された救援隊の活躍がヒロイックに描かれていた。中国人民の勝利。非常に政治的な内容だ。何もかもが政治に利用されてしまうというのは中国ではいつもの事で、今回の四川省の大地震とて例外ではない。テレビの特別番組には、本日現地入りした胡錦濤氏が被災地の視察風景や、救援隊の美談がふんだんに織り込まれている。
だからといって日本の報道が偏向してないかというと、そうではないのが悲しい所だ。中国の構造設計に関して、日本の某テレビ局の取材を受けた人の話を伝え聞いたが、「中国ってやっぱり酷いですね」というストーリーありきの取材だったらしい。
僕は、中国で大規模施設の設計経験が豊富とは言えないが、幾つかの例を思い返してみると、中国の耐震設計は日本ほどには綿密ではないものの、案外ちゃんとしている、という印象がある(凄まじい勢いで建設技術が進歩している国なので、最近設計された比較的新しい建物に限定させてもらうけれど)。今回倒壊した建物も、中層までの比較的古い建物が多いようだ。
あまり知られていないようなのでついでに書くが、建物の避難や消火設備に関する法規についても、日本と同等、それどころか日本より厳しい所も散見される。意外かもしれないが建物の身障者対応もかなり厳しい。「中国だったら法規も未整備だろうから、なんとかなるだろう」とナメた図面を持って中国に乗り込み、痛いメに会った僕が言うんだから間違いない。
日本のメディアー日本人自体がそうなのかもしれないが—は、どうしても中国を「民度の低い」、精神的に/文化的に/技術的に立ち遅れた国として見たがる所がある。確かにメチャクチャな所はあるが、本当にそのとおりの国だったら日本にとって何ら脅威ではないだろう。製品の生産量だけではなく、イビツではあるが多方面で凄まじい勢いで発展し、一部では日本を凌駕しつつあるから脅威なのだ。今の日本の中国報道は単なる気休めだ。本当の脅威を見極めてから恐れるべきだ。本当に、案外ちゃんとしてるんだから。あくまで「案外」だけどね。
話がそれたが、政治に利用されやすい大災害においては、迅速かつ最大限の援助を行うのはもちろんだが、チベット問題等の諸問題がウヤムヤにならないよう冷静にウォッチする事も重要だ(チベットの一部は震源から近いにも関わらず、被害状況は未発表の部分が多く、海外メディアも入れないという)。
日本からの救援隊は青川県という場所で活動を開始した模様で、中国のテレビでも大きく報道されている。もちろんこの報道にも政治的な意図があるんだろうが、同じ日本人として素直に誇らしい事で、ぜひ地震国日本のノウハウを生かして活躍して欲しいと思う。
来週には、ある日本人建築家が現地入りするという。また、アーティスト、ロンロン&インリによる写真芸術のギャラリー、三影堂撮影芸術センターでは募金やチャリティーオークションを開催するという。北京に居ながらこれといった活動ができてない僕としては、本当に頭の下がる思いだ。
投稿者 tofuku : 03:24 AM | コメント (2)
May 09, 2008
第3ターミナル
一週間程日本に戻っています。

とにかくデカい、の一言に尽きる。なんでも、世界最大の建物なんだそうだ。ノーマンフォスター設計の北京空港第3ターミナル。車寄せのキャノピーのデザインは、錯視のおかげで、ただでさえデカい建物をさらにデカく見せている。

中は曲面の屋根がひたすら続く大空間。中もやっぱりデカい。

たいていの空港ターミナルは、出発旅客と到着旅客を効率的にさばくために、到着ロビーの上に出発ロビーが乗っかる構造になっている。そのため、出発ロビーは太陽光が差し込む開放感に溢れた場所にしやすいのに対して、到着ロビーは天井が低く、薄暗い場所となりがちだ。南国の島国に行っても、薄暗い場所で入国審査を受け、薄暗い場所で荷物を探し、怪しげな白タクの勧誘を振り払いながら薄暗いタクシー乗り場からホテルに向かわなければならない。薄暗さのおかげで、初めて訪れる国への期待感よりも不安の方がまさってしまう。
そもそも、海外からやってきたお客さんや、故郷へ帰国してくる人を明るい空間で迎えるのが筋ってもんじゃないか?出発ロビーを利用する時は、やっと帰国できる安心感や、目的地に向かう高揚感がある。出発ロビーは薄暗くたっていいから、上下逆にした方がいいんじゃない?技術的な問題があるのだろうが(たぶん物流やセキュリティーの問題だと思う)、空港を利用するたび、これって何とかならないものなの?と思っていた。
このターミナルでは、出発客は、到着ロビーの上のブリッジを渡って出発ロビーに入る構造になっている。一体的な空間のおかげで、到着ロビーもかなりの開放感がある。大きな敷地をふんだんに使えるからこそ出来る芸当だ。
この第3ターミナル、国内線用のC、オリンピックのチャーター機専用のD、国際線用のEの3つのターミナル(AとBが無いのは第1/2ターミナルと混同しないようにという配慮だそうだ)からなっている。国際線に乗るためにはチェックイン後、さらに3つのターミナルを貫通する電車に乗らなければならない。きっと、搭乗口までの距離も世界一だと思う。ただ、やたらと歩かされる代わりに、長い列に並ぶ事は殆どない。このターミナルが完成するまでは、北京空港の行列を見るたびに憂鬱な気分になっていたが、ましになって安心した。
かわりにますます強く感じるようになったのは成田空港の不便さだ…。滑走路とターミナルの配置が悪いため、飛行機は着陸してからも延々と空港内を走り回る。まるでバスみたいだ。やっと薄暗い到着ロビーに吐き出されても、ホッとする事はできない。まだ家までは3時間もかかるのだから。
投稿者 tofuku : 12:19 AM | コメント (2)
April 22, 2008
Mizuma & One Gallery
この数カ月取り組んできた北京のギャラリーが、4月26日(土)、ついにオープニングを迎えます。皆様ぜひお誘い合わせの上お越し下さい。
詳しくはこちら。
20080504追記:いらして下さった皆様、有り難うございました。
投稿者 tofuku : 11:18 PM | コメント (2)
April 12, 2008
89万元
聖火リレーがちょっと凄い事になっている件、およびそれに対する周囲の中国人達の反応について…皆さんは興味ある所だろうけれど、それについては改めて書く予定です。そういっていつもサボってしまうんですがね。

先日紹介した長城近くの敷地に、もう一度行く機会があった。数日しか違わないのに、桃の花が満開になっていた。霧が立ちこめる谷にポツポツと上品なピンク色の花が咲いていて、その向こうに微かに長城が見える。なんとも幻想的だ。赤茶けた山間に広がる幽玄の世界。漢詩に詠まれているのはこういう風景なんだろう。

そのあと、宴席に呼ばれ、レストランに向かった。固辞するも、強引に上座に座らされる。中国の習慣における上座は、ゲストではなくホスト側が座る…ということはカネを払う人が座るということだ。「あそこって奢る側が座るんでしょ?」なんて我ながら情けない事を言うと、いいからいいから、お前はここでは外人なんだから大丈夫!と言われる。

出て来たお酒は茅台酒だったが、ちょっとラベルのデザインが違い「国賓 内部特供酒」と書かれている。袋には「89万元(約1300万円)の価値!」と高らかに書かれている。なんでも、政府内部に特別に提供される白酒で、過去、オークションかなにかでその値段がついた事があるんだそうだ。ロマネ・コンティなんてメじゃない。コップにナミナミと注がれ、これで15万元くらいだな、なんて思いながら口をつける。2本空けたので2600万円。外人で良かった。
実際の値段は、一本500元くらいだろうな。
投稿者 tofuku : 11:28 PM
April 11, 2008
長城の中身
このほど、ある仕事の敷地を見に行って欲しいと頼まれ、万里の長城の近くへ行った。

白い車が停まっている辺りが敷地。あいにく敷地からは見えないが、少し距離を取れば奥に万里の長城を望む事ができる。以前紹介した八達嶺なんかは、休日ともなれば凄まじい観光客で溢れかえるが、この辺りの長城はほとんど観光地化されていない。

敷地から十分も歩けば、その長城に直に触れる事ができるが、なにぶん無名の場所なので人影もまばら、というかゼロに等しく、代わりにリスが沢山居る。道端では養蜂をやっていたりして、のどかな風景だ。

当たり前だが万里というくらいだから長城はとっても長く、部分によって建造年代も違えば建造方法も違う。この辺りの長城は八達嶺あたりのレンガ造とは違って、花崗岩が使われている。石の刻み方は紫禁城のそれと同じで、観光資源としても貴重なモノだという。この長城に至る道は整備され、将来、修復、公開が行われる予定だという。クライアントは、それを当て込んで敷地の購入に踏み切った。

その長城。谷底を流れる沢の部分でぶった切れて居るので、断面を見る事ができる。中身は、平たい石を土で固めながら積層させて作られている。しかし、このぶった切れた部分の石、かなりの量になりそうだが一体どこへ行ったのだろう…

付近の農家の中には、なぜか同様の石を土で塗り固めた外壁の物が散見される。そんなに古い物ではなさそうだ。
え?まじで?いや、まさかね…。だって、世界遺産でしょ?
確たる証拠があるわけではないのであんまり突っ込まないでおくが、材料が建材等に流用されているために長城の破壊が進んでいるというのは本当の話らしい。ローマのコロッセオやパンテオンは、今はレンガむき出しの荒々しい建物だが、建造時は大理石で覆われた美しい建物だった。ところが時代が下ると大理石は剥がされ、砕いて石灰にされ、他の建物に転用されてしまった…そんな話を思い出した。ユネスコ?世界遺産?なんぼのもんじゃーい!てなもんである。

疑惑はひとまずおくとして、この外壁は味があってなかなかよろしい。

今は季節的に水は流れていないが、川の護岸も同様の工法で行われている。これも、味気ないコンクリート板を並べるよりずっといい。

ある農家の居間で食事。以前にも書いたが、長城近くには、このように副業として観光客に料理を提供する民家が多くある。出される料理は農家菜とか、農飯とか呼ばれる。山菜類を含むオカズを、ヒエやアワなどの雑穀を使った素朴な主食とともに食べる。とくに、ギョーザの具のような物をヒエで包んで蒸した饅頭が美味しかった。オカズの味付けは濃いめ。
中国に限らず、食事は都市部に行けば行くほど、米や麺、饅頭類を食べる量が減ってゆく。また、北へ行く程、オカズの味付けは濃くなる。過酷な労働を行う農村部では、エネルギーを多く摂取する必要がある。南方ではサトウキビが育つので糖分を取る事ができるが、北方ではそうはいかず、穀物を多く食べてカロリーを稼ぐ。結果、味の濃いオカズでコメを掻き込む食生活になる(もっと北になるとジャガイモ中心になる)。世界中の宮廷料理や高級料理でコメが出されないのも、我々が高級料理店で御飯をオカワリするのに何となく気が引けるのも同じ理由だ。
「中国通」の人の中には、「中国では御飯は最後にちょっとだけ頼む」のが通の証拠、とでも思ってる人が多いが、それは高級料理の席でのこと。実際の中国人ー特に北方の労働者達ーはコメをよく食べている。まあ僕がそういう人たちの世界にどっぷりと浸かっているだけなんだが。
投稿者 tofuku : 06:11 AM | コメント (3)
April 07, 2008
天津タクシー観光
長らくご無沙汰してしまいました。
時間が経ってしまい、ウロ覚えになってしまっているが、タクシーのオバちゃんに連れて行ってもらった天津の建築をご紹介。オバちゃんは租界の西洋建築を勧めてきた。租界といえば上海。ご存知の通り上海にも西洋建築が数多く存在していて、正直、天津のモノは規模、質ともにそれらに劣っている点は否めない。ただし、天津の租界の数は上海のそれを上回っており、各国のお国事情を見比べることができ、また上海のように著しく商業化されていないため街の雰囲気がいい。今まで何度か天津を訪れているが、租界以外の地域が中心だったため、街の汚さや建物のクオリティーばかりが目に付いていたけれど…いやあ、なかなかいいところですよ、天津。
途中、「これはフランス風の様式だからココはフランス地区だな」なんて言うと、オバちゃんは「どうして分かるの!!」と驚く。身振り手振りで「屋根がこういう形なのはフランス風」なんて説明すると「凄い!!」しきりと感心している。僕の建築史の知識なんて高が知れているので、はっきりいってマユツバなんだが、褒めてもらえてなんだか嬉しかった。
まずはドイツ租界からイギリス租界へと車で移動してゆく。





イギリス租界で異彩を放つノッティー(「イボイボ」の意)・ビル。1937年竣工、設計はイタリア人のボネッティとある。近代的なフレームにゴテゴテと過剰な装飾が張り付いている。


張学良の弟、張学銘が住んでいた家とのこと。
続いて、日本租界に入る。他の国の租界に比べ、こじんまりとした建物が多く見劣りするけれど、溥儀や孫文ゆかりの建物があり、近現代史の息吹を感じることができる。

日本租界にある、武徳殿。元々は武術の演舞場だったようだが、現在は病院の図書館として使われている。戦前日本において、国家的な様式と認定された「帝冠様式」(上野の国立博物館が代表的)。西洋的な建物に日本風の瓦屋根が乗っかるという「日本は西洋を押さえつけるんだぞ」的な様式で、これが日本租界の入口に鎮座している。
話はそれるが、近くにはつい最近場所を変えてオープンした伊勢丹がある。オバちゃんの話によるとオープン日には支配人までが入口に立ち、客を出迎えたというが、これが中国人を喫驚させたそうだ。これは良い効果を生んだ例のようだが、中国では、「偉い人は偉ぶらなければならない」という事も一方ではあるんだそうだ。例えば、日系の企業の中国工場では経験豊かな工場長が日本から派遣されて来る。そういったベテランの方々が自ら率先して掃除や片付けをしたりすると、中国人は「偉い人は偉い人なりの仕事をするべきだ」と困惑してしまうのだという。中国ビジネスは本当に難しい。

清朝の崩壊から満州国での即位までの2年間程、溥儀の居城であった静園。孫文も一時期滞在していたという。抑制の効いた、美しい建物だが、変な写真でごめんなさい。数年前に大規模な修復工事を終え、この建物は公開されている。仕事の合間だと、開館時に訪れるのは難しいな…。

他の租界とは比べ物にならないくらい整然としたイタリア租界。都市計画もカッチリとされ、清潔感があふれる。ファシズム期の近代様式の住宅が可愛らしく並んでいて、さながら戦前のイタリアの住宅展示場のよう(もちろん、戦前にはそんなものはない)。洋館を買う予定の方、ココが一番オススメですよ!(笑)

入口に建つ銀行は、イタリア・ファシズム期の新古典主義建築特有のレリーフを持つ。

地区中央のロータリーの角には、鐘楼のようにデザインされたバルコニーを持つ建物が対で建っている。


イタリアレストランが入っていたりする。一部区画は商業地化が進んでいるようだが、この地域は閑静そのもの。

続いてフランス租界も訪れたのだが、日没になってしまい、良い写真がないです…
投稿者 tofuku : 02:57 AM
January 25, 2008
和諧号
日/月曜と、天津/上海へ出張。日曜夜に待ち合わせの予定だったので、ちょっと早めに北京を出て、天津の街を廻ってみようと思い立った。日曜日だし、ちょっとくらい観光したってバチはあたらないでしょう!と。天津には2・3回行っているが、いずれも車に便乗し(というより拉致られ)ていたため、電車で行くのは初めて。さらには一人で電車に乗るのも実は初めて。

北京駅。建国十周年を記念して建てられた十大建築の一つ。工事期間は8ヶ月弱、設計を含めても1年足らずで完成した驚異のスピード建築だ。共産主義革命パワーによって成し得た、ということになっている。共産中国も最初の数年間は、素晴らしく運営されていたらしい。数千年もの間、汚職まみれの政治に耐えて来た人々には、夢の社会が到来したように感じられたことだろう。ユートピアへの熱狂が現場に満ちていたのだろうと想像する。

春節前なのでかなりの混雑。荷物のX線チェックを受けて入る。機械に通しているだけの素通り状態。ホールは、なにか懐かしいような、賑わっているのにどことなく物悲しいような。東京で言えば一昔前の上野駅のような雰囲気。

このシャンデリアは十大建築に共通した装飾。中華風でもあり、古典主義風でもある。

コンコース。出発の30分前に改札が開き、ホームへと出られるようになる。コンコースは待ち合いも兼ねていて、座り込んで待つ人、通り過ぎる人でごった返している。発車前に改札が開くシステムは中国独自のものだと思っていたけれど、小津安二郎の「東京物語」に似た描写があった。日本も昔は同じだったんだね。
しっかし、日本の新幹線の運行システムは凄い。数分おきに超特急をバンバン発車させてるのに、大事故を殆ど起こしていないなんてとても信じられない。

押し合いへし合い改札を通り、ホームへドヤドヤと降りる。怒号ーといっても本人達は普通に喋っているみたいだがーが飛び交う。

「日本企業から東北新幹線「はやて」の技術提供を受け、吸収した上で中国が独自に開発した」という<(突っ込みどころ満載の)中国オリジナル>新幹線「和諧号」。内部の作りまで含めて日本の新幹線そっくりで、日本人にとっては勝手知ったる感じでとても快適だ。LED表示の位置まで全く同じで、一瞬、新幹線に乗っているのかと錯覚するほど。途中、165キロくらいは出し、北京ー天津間を1時間強でつなぐ。車両のポテンシャルとしては300キロまでいけるらしいが、頼むからそんなに出さないで欲しい。

そのハイテク車両の向かい側に止まっているのは古色蒼然とした(古式ゆかしいとも言える)車両。煙が立ち上る。
知的生産の技術 (岩波新書)
