November 02, 2008

健身その後

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最近のランチ。いつもニコニコ看板娘の彼女は、山西省出身。ほったて小屋みたいな店を任されている。暇な時にはファッション誌を読んでいる…半分くらいはダイエットの記事。

オリンピックの前後は、僕のオリンピック景気への期待とは裏腹に、はっきり言ってヒマだった。工事は止まるわ、経済も停滞するわで、スタッフも「暇すぎて気が狂いそう!」とか言い出して、事務所の雑誌を読みふける始末。度を超してヒマになると仕事に対するモチベーションまでが低下してしまう。経済的な事も心配だけど、そちらの方がもっと深刻だ。このニッキに「ヒマだ!」とアピールした所で、仕事が来る訳でもない。他の日本人建築家は大陸を飛び回って仕事をしているのに、こいつは中国まで行って何やってるんだ!と、お客さんを躊躇させてしまうだけだろう。

当然、僕自身も先行きに不安を抱えるわけだけれど、所詮外国人なので、やれる事は限られている。ジタバタしても仕方がない。僅かに進む工事の監理をやるほかは、仕事がありそうな知り合いに電話をかけたり、広報活動をちょろっとやったりくらいしかできなかった。スポーツに縁遠い僕が、突然スポーツクラブに行きだしたりして「一体何が起こったの!かえって心配!」と身近な人々を心配させたのも、まあいってしまえばヒマのなせる技だ。

街を行く妙齢の女性達が、思わず面積を算出してしまいたくなるような、もっと言うと三つの角を合計すると2直角になる事を確認したくなるような。このヒマな時間をつかって、そんな逆三角形になってやる!と思っていたのだが、なかなかうまくいかない。クラブに通い始めると時を同じくして、ドカドカと依頼が来て、ニワカに忙しくなってしまった。正直、今のスタッフ数では全然廻らない。だからといってまだ設計料を貰える段階まで行っていないので、スタッフを増員するわけにもいかない。結果、僕自身に多量のタスクが降り掛かって来てしまう。やってきた仕事は他の事務所との共同作業で、北京中心部へ毎日行かなければならないので、ジムが空いている時間に帰ってくるのは難しい。時間を見つけてはなんとか通っているが、最近は行けて隔日くらい。

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先日、おっ!今日は泳げそう!と急いで家に戻り、素早くジャージに着替えて行ったところ、受付で「今日はプールが壊れてて泳げない!」と言われてしまった。プールって、壊れるモノでしたっけ?と憤りつつ、運動する気満々だっただけに、エネルギーのやりばに困って近所を散歩してしまった。

「直ったら電話するから」と言われ、その後2ー3日待っていたが、一向に連絡がない。痺れを切らして電話すると「ああ、もう直ってるよ」。おいおい…と思うが、長いこと中国に居ると、そういう事は慣れっこになってしまうんだな。

受付嬢に「ジムに機械が入って来てるよ!まだ設置中だけど」と言われ、様子を見に行く。凄い!パタパタして胸筋を鍛えるアレや、足を鍛えるアレ、なんて言うか知らないけれど、おそらく舌を噛みそうな長い名前であろうアレ達が大量に置かれていた。足の踏み場も無い…つーか、多すぎないか?レイアウトも考えずに勢いで買ったんだろう。ストレッチどころか、人が歩くスペースすらない。多すぎない?とスタッフに言うと、まったくお前の言う通りだ、うん、もっともだ!というリアクションをされた。

このスポーツクラブ、突っ込み所満載だ。人の居ない時間帯に行くと、電灯が消えて真っ暗だったりする。おかげで、施設内のスイッチの位置を覚えてしまった。ルームランナーのスイッチを発見したのも僕だし、スイッチの位置に関してはスタッフより詳しいかもしれない。唯一、まだ良く分からないのがサウナのスイッチの入れ方で、これはスタッフに頼まなければならない。おーい、そろそろ上がるからサウナ入れといてくれー!と行く度に叫んでいるが、サウナは電気を食うらしく、なかなか入れてくれない。暖まるのを待つのは嫌だからさぁ、とその度毎に説得する。

最高に褒めて言えば、アットホームな雰囲気だな。働いているスタッフの人柄は悪くない。

投稿者 tofuku : 05:57 PM

October 27, 2008

設計者Xの健身

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美術館の現場の近くに借りたマンションに住み続けている。北京のマンションのグレードとしては中の上くらいだと思う。外国人が住むマンションとしては下の下だけれど、独身者にとって住み心地は決して悪くなく、居着いてしまっている。部屋は北向きだけれど、21階なので、天気の良い日は遠くまで見渡せる。北向きの部屋は景色を順光で見る事ができるので、決して捨てたもんじゃない。

中国の場合、施設の全てが完成していなくても、入居が開始される場合が多い。2年前、ここに越して来たときには、外構がぜんぜんできていなかった。数ヶ月遅れて、庭が整備され、さらに2年遅れて、残りの住棟が完成し、最近ようやく全て完成した。

巨大開発では、広い敷地にノッポの住棟が立ち並ぶ事になるので、残りの部分を埋める必要が出てくる。散歩や、ベンチでくっちゃべる事が人々の生活に染み付いていることもあり、外構の設計が重要になる。ランドスケープの設計は「園林設計」と呼ばれ、ローカルの事務所には専門の設計者を抱えている所も多い。彼らは数をこなしているので、樹種に対する知識も含めて引き出しが多い。日本人の設計者よりよっぽど巧いかも、と思う事もある。

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で、最近、その「園林」の中に、ガラスの物体が出現した。温室か何かかな、と思っていたが、近づいてみると下に下りてゆく階段がある。ああ、駐車場の入口ね、と思っていたら、そのうち「健身」の看板が掲げられた。フィットネスクラブだった。

え?本当?地下にあるの?と中に入ると、スタッフが走って来て、これでもかと案内される。といっても、プール以外は、ぜんぜん完成していない。まだ職人が作業しているゴミだらけの部屋を見せられ、「ここがジムになります。トレーニング機械が沢山入る!」って言われてもねえ…。卓球室は卓球台がポツンと置かれているだけだし…

料金は、開店特別価格で1年1300元、日本円で2万円くらい。日本だと、月1万円はかかるから、だいたい6分の1。安いな…久しぶりに泳いでみるか、と入会してしまった。北京のイトーヨーカドーで水着やトレーニング用の服装をそろえ、通い始めてみたらこれがなかなか良い。最初は、突然運動したら心臓止まるんじゃないかと恐る恐る泳いでいたが、ここ最近はいい感じに習慣化してきた。近いので、サウナとシャワーが風呂代わりにもなる。ひょっとしたら続いてしまうかもしれないよ。

ここは、目標を上げて、すれ違う女の子達が「ていへん、かける、たかさ、÷2…」とサブリミナル的に三角形の面積公式を思い浮かべてしまうくらいの、逆三角形のカラダを目指してみるか。愛読する雑誌が「サイゾー」から「ターザン」に変わる日もそう遠くはない!…かもしれない。

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毎晩、この輝く入口に蛾のように吸い寄せられてゆく。

会員になったからには、ジムの方も使ってみたい。行く度に「ジムはいつから使えるの?」と聞いていたが、「馬上!(もうすぐ!)」という返事しか帰ってこない。こいつら、さてはジムを作る気ないな…と思い始めた頃、スタッフの女の子が駆け寄って来て「ジムに機械が入った!」という。おお!と行ってみると、相変わらず施工中の部屋の片隅に、ルームランナーだけがちょこんと置かれていた。彼女は鼻息荒く「どうだ!」と言わんばかりの自慢げな表情。ツッコむ気にすらならない。

仕方ないので試してみるから電源を入れるようにと言うと、コンセントの差し込み口が合わない。客を案内する前に一度試そうよ、お願いだから…とも思うが、彼女はあの日本人に早く教えてあげなきゃ!と親切心で案内したのかもしれないので、責める訳にも行かない。延長タップを取りに行ったりとドタバタやったあと、ようやく接続。その後、電源を探して再びドタバタやり、遂に僕がスイッチを発見して電源投入。

電源の位置も知らないくらいだから、スタッフはルームランナーの使い方なんて知るわけが無い。廊下で壁の塗装工事をやっていた大工までが参加して、3人がかりでボタンを押しまくって試行錯誤した末に、使い方を習得した。もちろん、その間、僕がベルトコンベアーの上で突然爆走させられたりしたのは言うまでもない。僕はトレーニングしたいのであって、安っぽいコントを演じる気はさらさらない。

なにせ風呂代わりだ。結構な頻度で通っているので、受付は既に顔パス状態である。最近は外国人の客が増えて来ているらしく、受付の子は英語の勉強を始めたようで、「あなた外国人だから英語くらい出来るでしょ?」という感じで参考書を見せられる。"Chinese is the greatest people!"という例文を読みあげると、「すごい!三か国語も話せるんだ!」と羨望の眼差し。もちろん悪い気はしなかったが、「中華人民は世界で最も偉大な民族である!」という、微妙に間違った、しかも変な政治思想が紛れ込んでいる中国語訳を見て、「とりあえず、参考書を換えた方が良いと思う」とアドバイスした。もうちょっとましな例文ないのかよと。

投稿者 tofuku : 12:54 AM | コメント (5) | トラックバック

October 25, 2008

建築家ブログ

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グーグルでちょっと検索すると、建築家のブログ、というのがバンバン引っかかってくる。自分の作品を紹介するもの、素敵なインテリアや映画を紹介するもの、最近読んだ哲学書を解説するもの、建築と格闘する毎日を綴ったもの、色々あるけれど、政治的な話やプライベートな話題は比較的ひかえめだ。

政治や経済の影響をモロに受ける業種であるにも関わらず、政治的な話題が避けられるのは、「どこから仕事が来るのか分からない業種」というのが大きいんだろうと思う。自分のプロモーションのために開設したはずのブログで、ヘタに特定の市町村や企業を批判して、将来の顧客を潰していたんでは元も子もない。

プライベートな話題という奴もクセ者だ。生活に密着した空間を提供する住宅専門の建築家ですら、その私生活はベールに包まれている。というより包まなければならない。建築家は、おいしいワインとそれに合うチーズ、美味しいイタリア料理店を薦める事はあっても、飽食を原因とする糖尿病で通院している事はひた隠しにしなければならない。女房と喧嘩した、娘がコギャルになっていた、カップラーメンとコーラが好物、なんて事は口が裂けても言えない。娘は広いテラスの上でフルートの練習をしてるようでなきゃ具合が悪い。日々、メディアで流布される「良い生活」を演じ続けなければならない、哀しい職種なんだな、たぶん。

あらあら、皆さん大変ですねぇ、と高みの見物を決め込んでいるわけではなく、僕自身も、そのあたりちょっとは気を使う事がある。この前、北京でフリーペーパーを発行してる方から、一週間のランチを紹介して下さい、という依頼があった。一週間、毎日ランチの写真を撮って記事にするそうだ。

自己顕示欲のおもむくまま、媒体には喜んでヒョコヒョコ出て行く方なのだが、これには困った。あなたは、カップラーメンや弁当を食べ続けている建築家に、終の住処の設計を頼みますか?もし、その一週間だけ頑張って、こだわりのパスタやサラダ、ちょっと意外!にヘルシーな中華料理やらを並べたとしても、どうしても嘘くさくなってしまう。というか嘘そのものだ。ただでさえ少ない仕事がなくなってしまいますので、と丁重にお断りした。

結局ココに書いちゃってるけれど。

このニッキは、元々は、1996年に始めた、自分が好きな音楽を紹介するただの音楽サイトだった。それを書いていた奴が、たまたま建築設計をやっていて、たまたま中国で仕事しているだけの事でして…最近、仕事で知り合った方々に発見される事が多くて、とっても恥ずかしい。とはいえ突然カッコつけた文章にシフトするのはもっと恥ずかしい。

写真は美術館のオープニングで揚げられた風船。いらして下さった皆様、有り難うございました。

投稿者 tofuku : 01:12 AM | コメント (2)

October 24, 2008

建材城

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スケルトン/インフィルという言葉がある。ざっくり言うと、建物の構造部分と内装を別々に考えて、内部を必要に応じてシャカシャカと入れ替えた方が便利なんじゃないの?という話で、以前日本でよく聞いた言葉だ。だが、中華圏では、そんな事わざわざ言わなくてもスケルトン/インフィルの考え方が浸透している。設計作業も、施工も、契約も、たいていは「建築」と「内装」がガッチリ分かれていて、例えば外壁の材料が内部にまで入り込んでくる場合には、とっても苦労する。

マンションもコンクリート剥き出しの状態で引き渡される。もちろん、みんながみんな、インテリアデザイナーに頼むわけではなく、持ち主が自分で内装を行う場合が多い。そのためのアンチョコ本もいろいろ出版されているし、会社によっては「マンションの内装監理休暇」みたいなのも認められているらしい。つまり、「今日はペンキの色を決めなきゃならないんで早退します」なんて理由が堂々と通るということ。

であるからして、お客さんも建材やデザインにとっても詳しい。よって、インテリアデザインを名乗るからには、よっぽど目立つ事をやらなきゃならんというプレッシャー生まれ、あげくの果てに目がチカチカするような「やりすぎ感」ムンムンの内装が街の至る所に生まれてくると言うわけだ。

もう一つ。中国人は基本的にカタログを信用していない。カタログの写真なんて嘘っぱちだと思っているところがあり、決定するためにはサンプルを確認しなければ気が済まない。全部の材料や設備をいちいちサンプル請求するわけにもいかないので、建材を一覧できる場所が必要になる。そうして生まれたのが「建材城」と呼ばれる建材市場だ。ココで内装業者に建材を買い与えて、作らせるという寸法だ。

内装の仕事では、少なくとも数回は建材市場に足を運ぶことになる。最近行ったのは、城外城という家具中心の市場。北京最大級の規模を誇る。

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オフィス用の椅子の店。一番手前の列のパイプ椅子は2000円程度。「オフィス用家具」だけで数万平米あるので、たいてい一つくらいは「許せる」デザインのものが見つかる。有名デザイン家具の「コピーっぽい」製品もかなりあるが、ここでは、そのものズバリのコピーは殆ど見かけない。

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うーん。良い線行ってるけど、どっかで見たような…

投稿者 tofuku : 02:31 AM

October 12, 2008

上を向いて

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「VIP碁会所」と呼んでいる物件も、もうすぐ完成しようとしている。まだ膜は取り付いていないが、光の効果も期待どおり行きそう。もう少しすればキチンと写真撮影できるので、詳しい話はその時にでも書こうと思う。

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天井の設計に注力している。たいていの場合、天井は設備の縄張りだ。あなたのオフィスの天井を見上げれば、蛍光灯、非常照明、空調の吹き出し口、煙感知器やスピーカー…などが散らばっている事だろう。中国ではこれにスプリンクラーが加わり、現場ではこれらの配置の調整に四苦八苦することになる。

でも、逆にいうと、天井ほど将来的にオリジナルに保たれる部位もない。床は家具やカーペットが置かれるし、念を入れて家具のデザインをコントロールしても、そのさらに上に変なモノが置かれてしまったら元も子もない。壁だって汚れるし、地図やポスターが貼られるかもしれない。…でも、天井をいじくる人はあまりいない。この物件ではそのへんを割り切って、天井>壁>床>家具の順番で重きを置いている。多少変なモノを置かれても、それに負けないような強度を天井に持たせた。

インテリア・デザインでは、通常は家具の設計や選択に注力するのだけれど、これに関して言えばあまり頑張っていない。デザインされたカッコいい家具も良いが、使い慣れた普通の家具、たとえばパイプ椅子と会議用の長机を並べるだけでも、まあいいかと思っている。何せ「頭脳スポーツのための体育館」だ。体育館の設計者が、選手のラケットやシューズに何も言わないのと同様に、使う道具にあれこれ言うべきでないんじゃないか。もちろん、施主から頼まれた場合は、話は別だけれど。

投稿者 tofuku : 05:12 PM

October 04, 2008

いよいよオープン

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諸事情により仕事の話はあまり書いてこなかったが、そろそろ書いてもいい頃だろう。

10月18日、磯崎アトリエの担当者として、ここ5年近く取り組んできた中央美術学院の美術館がオープニングを迎える。過去の現場写真を眺めていると、ローカルや職人達との思い出が蘇る。といってもほとんどが怒鳴ったり怒鳴られたりした記憶。今でこそお互い笑って話せるが、まさに悲喜こもごもだった。

書いたスケッチや図面の数は、おそらく数千枚になると思う。数千カ所を検討したのではなく、全ての箇所で何度も試行錯誤したためにとてつもない量になってしまった。
「これ、できる?」
「うん、もちろんできる。簡単だ」
「やっぱりできない」
「なら、こうすればできるはずだ」
「やってみる」
「やっぱりできない」
そんなやり取りを幾度繰り返した事か。ローカルや施工の担当者は、辛抱強く付き合ってくれた…最後は「日本人建築家の仕事は二度とやりたくない」と笑いながら言われたが。

中国を代表する有名大学の付属施設、アートについて理解のある施主。ローカル達にも「こんなに恵まれた仕事は日本でもない、中国の限界を知る一生に一度のチャンスだ。粘れるだけ粘ろう」と言い聞かせ、似たような図面を何度も描き直させた。

しょっちゅう施主の元を訪れ、説得を試みた。粘りすぎて、施主から「東福、お前はよく頑張った。それは分かったから頼むから止めてくれ」とストップが入る事もしばしばだった。とはいえ、理解のある施主であることは確かで、僕の提案はかなり受け入れてもらえた。

正直、構造が上がり始めてからも、この建物は果たして完成するのだろうか?と半信半疑だった。工事がだいぶ進んで内装に入った頃、手持ち無沙汰の職人達がボーッと天井を眺めているのを見て、やっと、これは良い建物になる!という確信を得た。

4年もの間、中国的システムに対して愚痴りながらも、それを心のどこかで楽しんでいた。まあ、そのくらいの気構えでなくてはココでの仕事はできない。来たばかりの頃は、中国の建築生産のシステムが分からずにとまどうばかりだったが、試行錯誤を繰り返すうちに、中国でクオリティーの高い建物を作るコツが掴めてきた気がする。次からはもう少し効率的に仕事ができると信じたい。

いろいろ思い出されるなぁ。

…と、センチメンタルな気分に浸りたい所なのだが、オープニングが終わって一区切り付くまではまだまだ気の抜けない状況が続く。格好悪い家具を発注しないように目を光らせたり、雑誌の取材対応をしたり…まだ仕事は残っている。

つーか、オープニング本当に間に合うの?って状況なんですが…

雑誌発表の状況はこちらで紹介しています。日本の専門誌での発表はもう少し先になりそうです。最も一般向けだと思われるSANKEI EXPRESSの記事はこちら

投稿者 tofuku : 06:21 PM | コメント (5)

September 30, 2008

計画は壁の上で

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何度か登場させてきたこの写真。flickrに載っけていると、時々「使わせて欲しい」という連絡がくる。

実は2006年から、イギリスの総合建築/都市エンジニアリング・コンサルタント企業、Arup内のプロジェクトチーム"foresight"が編集した教育ツール"Drivers of Change"にも使われている(一気に書いてみたが、長い…)。

教育ツールといっても見た目はただのカードセット。未来の都市/建築/生活にまつわる問題点や疑問が一枚づつカードに分けられ、表には写真と概要が、裏には関連する図表とともに解説されている。企業の戦略立案、ブレインストーミング、研修などの使用のために開発されたとか。ちなみにこの写真は、「アーバニゼーション(都市化)/交通」の項にある。

最新版の"the rainbow set"を1セット送って貰ったが、内容はさすが頭脳集団Arupの面目躍如といったところ。デザインもカッコ良く、企業エグゼクティブの机の上の飾りとしてもグッド(おいおい)。

実物が手元に来ていたのでとっくに売られているものと思っていたが、発売は2009年春からなんだそうで。出版元は(たぶん)スペインのGGことGusutavo Gili社から。

で、カード。

アメリカのサスペンス・ドラマ、例えば24とかプリズン・ブレイクを見ていると、壁の上に写真やらスケッチ、新聞記事、表、などなどを壁一杯に貼って、それらを動かしながら計画を練るシーンがしばしば出てくる。日本でも、「仕事術」系の本では、必ずと言っていいほどカードやポストイットを使った情報整理法が紹介されている。断片的な情報を小さな紙切れに入れ、それらを組み合わせて新しいアイディアを得ようとするのは、そんなに新しい話ではなくて、例えば「知的生産の技術」で梅棹忠夫氏が紹介、1970年代の日本で大ヒットした「京大カード」や「スクラップブック」なんかもそうだろう。

そういや、生前の父親の書斎も新聞の切り抜きやカードで埋め尽くされていた…。並べているのはついぞ見なかったけれど。当時の「知的になりたいヒト」たちはこぞってカードを買い求めていたらしい。

最近のオフィスでは、色んなものが貼れるように、壁を全面コルク貼りとしたような会議室も見かけるようになっている。そんな「紙切れ並べ型」のプロジェクト・スタイルが復活して来ているのは、コンピュータの浸透が大きいんだろうな、なんて思っている。僕だって、今話題のコンピューターと今話題のインターネットを使って、世界の片隅で今話題のデザインをやっている一人だけれど、コンピューターというやつは一覧性に欠けていてどうにも具合が悪い。一度に全部ひろげて見たい時ってあるでしょう?その欲求不満が、オフィスの壁へと向かって行っているのだろう。

いま自分のオフィスには大きな壁はないけれど、ゆくゆくは、なんでも貼れて、なんでも書ける大きな壁が欲しいなと思っている。

いつのことになるやら…

知的生産の技術 (岩波新書)

投稿者 tofuku : 06:59 PM

September 26, 2008

中国の真空管アンプ事情

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半年を費やした中国オーディオ調査、今日でひとまず完結、の予定。

アンプとスピーカーが一通り揃い、ホクホクしながら聴いていたら、アンプの調子が悪くなってしまった。どうやら、酷使しすぎたのと、変圧器にトラブルが発生したのが原因のようだ。週末はプロのレコーディング・エンジニアがスピーカーを試聴しに来てくれるというのに…というわけで、今のアンプは今後ゆっくり修理/改造をすることにして、タフな中国製アンプを新たに購入することにした。予算は思い切って2万円。オーディオの値段としては安いかもしれないが、中国では平均月収にも匹敵しようかという大金だ。金銭感覚が中国化している僕にとっては、まさに清水の舞台から飛び降りる思いである。仕事にフィードバックできる可能性も皆無で、自分を納得させる理由も見つからないし。

「世界の工場」中国にとって、作っていないモノなど最早ない。高級オーディオも然りで、だいたい、ケーブル1本にお金持ちが数百万出してしまう利益率の高い世界を、商売に目ざとい中国人が放っておくわけがない。

前にも書いたように、中国ではいまだに真空管を製造している。有名なのは元国営企業の「曙光」、オーディオ専門で成功した「Full Musuc / 天津」、イギリスでチェックする事で高い付加価値をつけている「Golden Dragon」など。電化製品の生産が盛んな中国の南方では真空管アンプも沢山作られている。「AudioSpace」、「Cayin」などは特に有名で、日本にも輸出・販売されている。ただし、中国国内の数倍の価格でね。他にも、日本に代理店を持たないアンプメーカーが乱立している状況のようだ。

アンプメーカーがなぜ乱立するのか、といえば、「基礎技術が低くて済む」というのもあるだろう。高精度のマイクロチップがあるわけでもない。高い工作機械が必要なわけでもないし、クリーンルームだって必要ない。作ってみて、音がイマイチだったらトライ・アンド・エラーで改良してゆけば良い。そして、その作業に必要な人件費は安い。中国は、「そんな高い技術力がなくても、マンパワーをかければなんとかなりそう」な製品にめっぽう強い。このニッキで何度か取り上げた機械式腕時計もそう(「なんとかなって」いない製品もかなりあるが)。自分自身の設計にも、その中国の特性を生かそうと絶えず考えていて、最近の「木とプラスチックのパーティション」もその一つである。

北京の、女人街というところにある「中古電気市場」。薄暗く湿っぽく、そして熱気に満ちているアジアン・バザールの中に、真空管アンプを売る4畳半程度のブースがある。壁にはカラヤンとケニーGのドでかいポスター。店主のオバさんは、その片隅で自作のアクセサリーを売っている。友人達と一緒に、オバさんに片っ端から試聴させてもらい、悩んだ末にこれに決めた。

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EL34という真空管を使ったA級プッシュプルアンプ、1980元(約3万円)。勢いに乗って予算オーバーしてしまった。メーカーはYaland(雅燃)といって、まだ世界展開の途上にあるようだ。余裕を感じるパワー感。造りもしっかりしており、デザインも悪くない。そして、中国では珍しい箱付き・1年の保証書付き!驚いていたら、オバさんに「ウチは正規代理店だからさ!問題あったらいつでも持ってきな!」と自慢された。なんちゅうショボい正規代理店だ…

オバさんは、よく日本人のオジさんが来て、いくつもアンプを買ってゆくよ、と言っていた。オーディオファン/音楽ファンの方、中国ミヤゲに真空管アンプはいかがでしょう。日本で買うより明らかに安い。但し、たっぷり試聴して納得してから買いましょう。

そして、真空管アンプは重い事を忘れずに。買ったアンプは17キロもある。エコノミークラスは20キロまでで、まあ8キロくらいのオーバーなら多めにみてくれるから…事前に計算しておいたほうがいい。

投稿者 tofuku : 09:40 PM

September 24, 2008

構想2ヶ月、製作3ヶ月

真空管アンプで挫折してしまったのは今年の春頃。いや、挫折というべきでないな。転進したというべきだな…大本営発表みたいだけれど。

転進先はバミューダ沖ではなく、これ。

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スピーカーの設計・製作だ。スピーカーというのは、ユニット(磁石がついてて電気で震えて音を出す部分)と、エンクロージャー(箱)の2つからなる。そして、その箱の形や素材が、音質に大きな影響を及ぼす。ユニットの方は余程のマニアでなければ作れない精密機器だけれど、箱の方ならなんとかなりそうだ。

「日本スピーカー自作界」は、なかなかに奥が深い。音楽/オーディオ評論家の長岡鉄男氏、という方が最も尊敬されていて、彼は生涯に600種類のスピーカーを設計・製作したという。遺された図面や著作は今でも書店で買える。パーツは、「日本スピーカー自作界のメッカ」こと秋葉原のコイズミ無線に揃っている。日本に帰った時に一度行ったのだけど、仕立ての良いスーツをピシッと着た、会社ではそこそこ高い地位に居るであろうオジサマ達が数人居た。日曜大工がてらスピーカーを組むんだろうか。

長岡大先生の著作を参考に、設計を始めてみると、これがまた結構分かりやすいし楽しい。音を形にするというんだろうか、音の流れや反射を考えながら箱の内部空間を設計するのはなんだか建築的な作業でもあった。職業柄、空間を図面化するのは得意である。生まれて初めて建築をやっていてよかった、と思った。冗談です。

一緒に仕事をしていた内装屋の親方を「内装なんかやっててもこの先儲かんないぞ!スピーカーの箱なんかどうだ!下手すりゃ箱だけで数万元で売れたりするんだぞ!」と、まあ嘘ではないけれど一般的でもない例を引っ張りだしてだま説得し、2種類のエンクロージャーを作ってもらった。「現場がある時についでに作るから」と2ヶ月以上待たされた。

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上の写真はバックロード・ホーンと言うタイプ。中にホーンのような音道を組み込んである。下のものはバスレフというタイプ。作ったばかりの時は中低域がモコモコしてしまっていたが、スタイロフォームの塊を中に入れたり、中のグラスウールの位置を調整するうちに改善されてきた。いろんな人に聴いてもらったけれど、下の方が評判が良い。僕個人は上の奴を気に入っているが、確かに少々クセがある。

まあどちらも、総予算2−3万円で作ったスピーカーの音とは思えないのは確か。そこらのオーディオセットには負けない…と思うんだけど。


世界でただひとつ自分だけの手作りスピーカーをつくる


長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 基礎編

投稿者 tofuku : 06:30 PM | コメント (3)

September 23, 2008

今月の草場地

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9月10日から一週間ほど東京へ戻っていた。いくつかの打ち合わせをこなし、いくつかのパーティーに参加し、家族や友人と食事をし、ビザの申請や各種料金を払い込み、北京では買えないガジェットを買い込み、20日から始まるMizuma & One Gallery展覧会の進行状況を見届けるべく北京に舞い戻る。

ジュン・グエン=ハツシバさんの作品。上部に浮かぶ無数のペーパー・オブジェクト(1000個以上あるという)は、ヴェトナムの伝統的な副葬品。お盆の時等に燃やし、黄泉の国の死者へ贈るという。部屋は薄暗くされ、壁は全てブルーに塗られ、まるで海底のよう。床に置かれた鏡面仕上げの地球儀には、覗き窓があり、覗くと、世界地図の上に数字が書かれているのが見える。世界各地で起った天災や大量殺戮の座標・時間がプロットされているという。

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もう一つの作品。これもまたヴェトナムのお盆グッズが参照されている。走馬灯のように、なんて言うけれど、灯籠やら蝋燭に死のイメージを重ね合わせるのは世界共通だ。

力の入った展覧会なので、オープニングに来れなかった方も期間中に足をお運び下さい。

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近くの北京ファインアーツでは名和晃平氏の展覧会。この部屋の設計は迫さんがやったという。東京的な感覚をココまで持ってこれる力量はさすが。

草場地には、オリンピック前までにさらに4−5軒のギャラリーがオープンしている。

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その一つ、リー・スペース。学校を卒業したばっかりの作家/または学生の作品に力を入れている。うねった床を作ってしまうという力の入れようだが、職業柄、細かい所に目がいってしまう。なんか文化祭みたいだよなぁ、と思ったが、ギャラリストの人達の「若手の作品を壁にそのままかけたのでは、もっとみっともない。多少クオリティーは低くてもパワーを感じさせる展示をした方がいい」との話を聞き、なるほどと思う。

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北京空間という新しい画廊のそばで見かけたインスタレーション(?)。雨が降ると面白いことになるかもしれない。

投稿者 tofuku : 04:59 AM

September 18, 2008

ジュン・グエン=ハツシバ "The Globe Project in Beijing"展のお知らせ

9月20日(土)より、北京/草場地のMizuma & One Galleryにて、ジュン・グエン=ハツシバ氏による開廊二回目の展覧会"The Globe Project in Beijing"が催されます。私共は、グランドオープニング時に行った内装の設計に引き続き、メイン・ホールを一杯に使った大型インスタレーションに関する技術的なサポートをさせて頂きました。

オープニングレセプションは、9月20日(土)15:00ー17:00に予定されています。東福も現地に居る予定ですので、皆様お誘い合わせの上、是非いらしてください。

詳しくはこちら

投稿者 tofuku : 06:34 PM

September 05, 2008

これも終わっちゃってますが。

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入口に掲げられた開幕式のコンセプトドローイング。北京の地図の上に巨大な足跡が点々と…開幕一週間前に完成したばかりとか。

9月2日まで、中国美術館で開催されていた蔡国強"I Want to Believe"展。ニューヨークのグッゲンハイム美術館で行われた個展の巡回に、オリンピック開幕式の花火パフォーマンスを題材にした巨大なドローイングを加えた展覧会。会期が二週間そこそこしかなく、非常に短い。オリンピックにぶつけるためにかなり無理をしたんだろう。

中国美術館は中国でかなり権威ある美術館だが、設備がとても古く、空間も現代美術向きではない。ベニューに問題はあるけれど、展示のヴォリュームはかなりのもので、作品は一度見てみたかったものばかりだった。展示の仕方がちょっと乱暴なのは残念だった。少なくともこの美術館のテカテカの大理石の床はなんとかして欲しい。

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レセプションの模様。一番手前が蔡氏。日本で活動した時代もあり、日本語も堪能…らしい。同行させて頂いた方は、蔡氏とは古い知り合いだったが、それでも簡単な挨拶くらいしかできなかった。だから、僕は未確認。

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その後、東京とNYからいらした美術関係者の方に同行して、北京ダックの有名店「大憧」へ。席が空くのを待っている間は、ダックを焼いている所を見る事ができる。僕はこの店の「白菜と栗のサフランソース」が好きで、これは北京一旨い料理だと思っている。ダックのスープはクセがあり、美味しいものではないけれど、それが栗と白菜と合わさると非常に上品な味になる。この料理を食べている間、皆が無言になってしまうほどの逸品。

北京で食べるならコレですよ。

投稿者 tofuku : 08:38 PM | コメント (0) | トラックバック

August 18, 2008

サッカー見て来ました

くれーなずーむまちのー。

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ここ数日の北京は、晴天に恵まれている。湿度も下がって非常に過ごしやすく、秋の雰囲気さえ感じる。オリンピックが終われば、一気に秋に突入するんだろう。

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土曜日には、S事務所のHさんに誘って頂いて、オリンピックのサッカー男子を見に行って来た。日本戦ではないけれど、イタリア対ベルギーというカード。「東麻布で彼にサッカーを観させたら右に出るものは居ない」と評判の竹森君から、「なんか、イタリアの10番が注目らしいですよ、メンバーは全然知らない選手ばっかりです」という、特に役に立ちそうもない事前情報を仕入れてから向かった。


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会場は1959年に人民共和国十周年を記念してられた「十大建築」の一つ、工人体育場。十大建築は、共産主義革命の勝利を体現すべく、全てが建設決定から竣工までが一年以内という驚異的なスピードで建設された。だから、設計も大味だし施工も荒い。逆に言えば、「短期間でそれっぽいものを作る」テクニックは随所に見られ、面白い建物とも言える。

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監視員達は等ピッチに並んでおり、どんなに試合が盛り上がろうともずうっと観客席を凝視している。無駄な動きが一切なく、おそらく解放軍から派遣された人達だと思う。

中国人の観戦マナー問題は、日本のメディアで色々報道されているようだ。バドミントンのオグシオ戦での応援を取り上げた夕刊フジの記事。スマッシュのかけ声「シャー!」に「殺」の文字をあてはめ、「殺せ!殺せ!である。とても五輪とは思えない光景だ」と結んでいる。うーん、僕は現地に居た訳ではないし、中国でバドミントンを見た事がある訳ではないので、確かな事は言えないけれど…どうだろう?ちょっぴり飛躍してる「釣り記事」かもしれないなと思う。ローカルにも聞いてみたけれど、それは単なる掛け声じゃない?と苦笑していた。まあ、僕も彼女も、その一方で「でも調子に乗ってやりかねないよな…」、とも思っている訳だけれども。

日本での報道を見ている人達にとっては、中国は何かにつけて日本を敵視している、と思うかもしれないが、僕はそのあたりに少々温度差を感じている。中国はそこまで日本の事を気にしていないのではないか。ほら言うじゃない、「愛の反対は無関心」だって。中国での報道を見ていると、日本はワンオブゼブの外国に過ぎないのではないか、と思えてくる。圧倒的に優位なスポーツの世界なら尚更だ。

とはいえ、サッカーはちょっと違うようだ。中国人はサッカー大好きなのにも関わらず、ナショナルチームは国際的にはイマイチどころか、日本にすら敵わない。そういった苛立ちが中国人観客のマナーをますます悪いものにしているようだ。日本戦では、訳の分からない所でブーイングをしたとかで、親中派の日本人の友人も憤っていた。

中国のサッカーチームに対する苛立ちは報道にも現れているようで、先日は、テレビやラジオで「中国対ブラジル戦を観戦するべきかどうか」という内容で盛り上がっていたそうだ。「どうせ勝てないし、万一勝っても決勝トーナメントに行ける訳じゃないので見なくてよい」とか、「この先ワールドカップもオリンピックも出れないだろうから見ておくべき」とか…。どちらにしても中国人らしい諦観と合理主義だ。残酷と言えば残酷。

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PKで一斉にカメラを向ける観客達。あとで良い写真や映像がメディアで見れるんだから頑張って撮らなくてもいいのに…。という僕も彼らにカメラを向けている。

試合は非常に面白かった。開始20分でベルギーがレッドカードを食らってPKで1点失点。これでイタリアのフルボッコかと思われたが、ベルギーは10人で大健闘。3点を挙げて3ー2で勝利した。

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喜ぶベルギーの選手達。

投稿者 tofuku : 04:01 PM

August 16, 2008

バレーボール見て来ました

スポーツ観戦のチケットというのは、大抵そんなものなのかもしれないが、オリンピックのチケットの在処にはかなりのバラツキがあるそうだ。会社の接待用に大量に買い占めた末に大量に余り、さして興味の無い社員に配っている所もあれば、欲しくても手に入らず、ネットオークションで何十倍もの価格で落札している人もいる(なんでも、開会式のチケットは最高で30万元=約450万円で落札されたとか)。ある所にはますます集まり、無い所には全然ないという、収穫逓増の法則がはたらきまくっている。完全な市場経済の国になっているな、中国は。

僕は、人気競技を狙いすぎたせいでチケットの抽選をことごとく逃してしまっていて、いいもんねー、テレビで観るもんねー、路上でマラソン観るもんねー、とイジケて居た。一枚もないので収穫逓増の法則もはたらきようがない。4年前から北京に居るのに一つも観れないなんて寂しすぎるなぁ、人気競技でなくてもいいから、せめて会場の雰囲気は味わいたいよなー、と思っていたところ、友人に「チケット余ったから行く?」と誘われ、二つ返事でOKしてウキウキ行って来た。幸い、スタッフ達には休みを取らせている日だった。

朝、タクシーを広い会場へ。期間中はタクシーが激減しており、なかなか拾えず、近くに並んでいた人と相乗りする。運ちゃんと3人でオリンピックの話をワイワイしつつ向かう。運ちゃんは英語が驚くほど達者で、オリンピック期間中はかなり荒稼ぎしているらしい。昨日はアメリカ人3人を乗せて万里の長城へ連れて行き、600元もらったと自慢していた。彼らも幸福、ワシも幸福、と言っていた。そりゃ幸福だよ、相場の倍ぼったくってるんだもの。

女子バレーボール、ロシア対アルジェリアとブラジル対カザフスタン。全国ウン千万の女子バレーの方達には申し訳ないけれど、どのチームがどのくらい強いか、全く分からない。ルールもイマイチで、リベロというスパイクを打っちゃいけない人が居る、という位の知識しかない。

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会場は、北京理工大学という大学の中の体育館。学生ボランティア達が夏休み返上で観客の誘導に精を出している。「いらっしゃいませ」「こちらへどうぞ」「ご協力ありがとうございます」と、今まで聞いた事も無いくらいの、清く正しく美しい中国語で話しかけられる。誇らしげで爽やかなスマイル。一人っ子政策の影響で自信だけはイッチョマエな大学生ばかり相手をしてきた僕には、驚愕だった。あの小生意気な学生達はどこへ!

やればできるじゃないか、中国!

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大会マスコットと写真を撮るべく、行列をする人々。ボランティアが列を作らせているとはいえ、キチンと並んでいる事に感動。これが一昔前だったら、人々が詰めかけて大混乱、後には傷だらけで泥だらけのキグルミが残されていただろう。

やればできるじゃないか、中国!


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会場。けっこうコジンマリしている。学生ボランティア達は、会場にウェーブを作らせたり、フラッシュを使わないで下さい!と指示したりと忙しい。

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ロシア対アルジェリア。右端に居るロシアのリベロは、確か身長が174センチと言っていた。他の選手がデカイ!2メートル以上の選手が何人も居た。デカイ!とかカワイイ!とか頭小さい!とか、バカ丸出しの解説しかできなくて申し訳ないが、ロシアの選手の方は色の白さで遠目には良く見えるが、実は可愛さで言えばアルジェリアの方が上なのでは?と、試合とは何の関係もない事をユルユルと考えていた。

観客は多くが中国人。中国の試合ではないので、かなりピースフルな雰囲気。同じ旧共産圏だからか、ロシアを応援する姿が目立った。いや、中国はいちおう今も共産圏か。

スパイクが自分の顔に当たったら首がモゲるだろうな…とか、キン肉マンの超人オリンピックのような超人達の戦いを想像していたけれど、端から見ている限りは鼻血か鼻骨骨折くらいで済みそうな感じだった。

試合結果はロシアのストレート勝ち。この日行われた予選6試合のうち、5試合がどちらかのストレート勝ち(日本はキューバにストレート負け)。国によって実力差大きなスポーツなのね。

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ブラジルは、スパイクがフロアに突き刺さる感じで、練習のときから明らかに強そうだった。体格も全く違う。試合が始まっても実力差は歴然。カザフスタンは2セットを連続して落としてフルボッコ状態で、だんだん可哀想に思えて来た頃、自分のすぐ前に座っていた中国人の若者がカザフを応援しはじめた。オリンピック会場には「マナーの良い中国人」を演出する為に仕込みの応援団が用意されているらしいが、彼は両親と見に来ていたので仕込みの可能性は低いと思う。

彼をきっかけに、会場全体はカザフの応援一色になり、ブラジルの応援団が逆に可哀想になるくらいの「加油!カザフ!」の大合唱。当のカザフの選手達もどうして自分たちが応援されているのか分からず、頭の上に大きな「?」が浮かんでいるような状態だった。

中国人のメンタリティーが分かって来た僕の推測では、それはたぶん
・旧共産圏のよしみから
・判官びいき
・中国人は北方の白人女性が好きだから
・折角チケット買ったのに、このまま終わったのではつまらないから
大方そこらへんの理由からだろう。特に最後の可能性が大きい。

とにかく、中国即席応援団のおかげで、第3セット目のカザフはデュースまで持ち込む大健闘。負けてしまったけれども、観客達も満足そうだった。

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セットの間には急遽養成されたチアリーダー達が。いまいち揃っていないのが微笑ましい。

投稿者 tofuku : 12:22 PM | コメント (4)

August 13, 2008

CG処理…

始まる前から予想された事だけれど、色々噴出してますな。

オリンピックの開会式の花火の空撮映像。その殆どがCG合成だった、というニュースが。今見返してみると、特に発射の瞬間がうさんくさい。あの映像を見ながら、「あれ?北京の上空ってもの凄い航空管制が敷かれてるんじゃなかったっけ?地対空ミサイルで撃墜されないの?」という疑問が一瞬脳裏をかすめたけれど、まさか合成映像とは思わなかった。

オリンピック関連のCGの殆どを製作しているのはクリスタルCG(水晶石数字科技有限公司)という、中国最大のCG制作会社だ。この会社、北京の有名プロジェクトのパースやムービーは殆ど作っているので、建築関係者にはかなり名が通った存在だ。テレビCMなどにも仕事が多く、日本で目にする中国産CGの殆どはこの会社のモノだと思っていい。

とってもとっても儲かっているらしく、空港にデカデカと広告があったりする。また、自社ビルはCCTVの設計でおなじみ、オランダのOMAに設計を依頼しているそうだ。確かにココのCGは格好良く、一度は頼んでみたいなぁ…と思っているけれど…高くて手がでない。せいぜい、この会社から独立して細々とやっているレンダラーに頼むのが関の山だ。

話はそれたが、件の映像も、おそらくクリスタル製だ。

このニュースがウェブ上に出た時、僕が開会式で大興奮していたのを知る人から慰めの言葉(?)を頂いた。

・国威発揚のためにはやむを得ない(ついでに女の子の口パクも)
・レニ・リーフェンシュタールの「オリンピア」だって、市川崑の「東京オリンピック」だって、別撮りだらけじゃん。

って、慰めになってるか?2つ目にいたっては、記録映画であってライブ中継じゃないし…。そもそも僕を慰める意味がよくわからない。

まあでも、有り難うございます。

ちなみに、勘違いしている人が居るみたいだけれど、足形の花火は実際に打ち上げられている。Youtube上にもメイキング映像(の番組?)が上がっていて、準備や練習の様子を見る事ができる。

花火を担当したアーティスト、蔡国強の大規模な個展が、19日から中国美術館で始まる。CG処理は彼の指示ではないだろうけれど、展覧会の前にちょっとミソがついちゃった感じだなぁ…

投稿者 tofuku : 04:37 PM

August 09, 2008

始まってしまいましたね

北京のあちらこちらに「オリンピックまであと何日」の表示板がある。最初に来たときは余裕で1000日を超えていたのに…。感慨深いものがある。

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先週末、韓国の設計事務所、IROJEの北京代表の趙さん、松原事務所の勝田さんと飲んでいた時に、来週の開幕式をみんなで見ましょうよ、という話になり、IROJEの事務所を提供してもらって「開幕式を観る会」をすることになった。飲みながら話をしているときには「ロシア人のダンサー雇ってさぁ!」なんて盛り上がっていたのだけれど、自分にモンゴル出張の予定があるのをすっかり忘れていた。その上、出張から戻るなり風邪でダウン…。趙さんと勝田さんに準備の殆どを頼りながらも縮小に縮小を重ね、最終的には「ゆるゆる」でコージーな感じで楽しみましょうよ!という会になった。でもでも、突然の誘いにも関わらず20人くらい集まってくれて、楽しく観る事ができた。皆さん有り難うございました。

2年程前、北京のバーで、開幕式の仕事をしている、というデザイナーと話をした。チャン・イーモウを頂点として、セクション毎に世界各国の演出会社が関わっているんだそうだ。香港出身で、イギリス系の会社を手伝っていた彼女は、どんな内容かはもちろん言えないけれど、歴史に残る凄い開幕式になるわよ、とだけは教えてくれた。

政府高官へのプレゼンが当日になって突然セットされたり、逆に突然キャンセルされたりで、とっても大変そうだった。チャン・イーモウは政府の言う事を良く聞いているわよ、そういった意味でも凄いヒトよ、とも言っていたので、「この部分はあんまり良くないな、後からムリヤリ突っ込んだんだろうなぁ」とか想像しながら開会式を観ていた。中国の仕事、とりわけ政府絡みの仕事は、政府高官からの横槍が度々入り、それに対応するのに膨大なエネルギーを必要とする。いくら国を代表する映画監督と言えど、場所が場所だけに政治圧力と無縁では無かっただろう。それをあの一連の演出にねじ込んでしまうのだから大した力量だ。

しかしまあ、凄い演出だった。北京全体を使ったダイナミックな花火。蔡国強(ツァイ・グオチャン)という人は、20年程前に火薬の爆発を使って万里の長城を延長する、というアースワーク的なパフォーマンスをやったくらいの人なので、デカい事やるだろうなぁとは思っていたけれど、分かっちゃいたけどやっぱり凄い。

エンターテイメントとしても、アートとしても、そしてもちろん、中国自体のプロモーションとしても一級だと思った。中国の数のパワー、テクノロジー、歴史…がいかんなく注ぎ込まれている(しかもお得意のワイヤーアクション付き!)。現代的に洗練されたマス・ゲーム!

このところ、海外メディアの報道内容が単なる中国批判を通り過ぎ、なんでもかんでもネガティブな内容に持って行こうという奇妙なバイアスがかかっている状態が続いていた。中国は問題だらけの国なのは事実で、問題をあげつらえばキリがない。いくら中国の自業自得とはいえ、報道の優先順位に首を傾げる事が多かった。

でも、このセレモニーに関しては、どのメディアもほぼそのまま放送せざるを得ない。中国は、バイアスが解除されるその僅かな一瞬を、最高のアーティスト達を動員してコジ開け、世界の視聴者に直接アピールする事に成功したのではないか。「文化」で革命を起こそうとしたくらいの国だから、アートの持つ力を利用するのはお手の物なのかもしれない。海外メディアの中国報道に対して感じていたモヤモヤが、スカッと晴れたような思いがしたのは、僕が中国人化してきている証拠なのかな?

地域によって格差はもちろんあるけれど、モノの生産に関しては日本の優位性はかなり少なくなって来ているように思う。残るはコンテンツ力だけれど…中国はコンテンツに関してもメキメキと力を付けて来ているのが、このセレモニーからもハッキリと感じられるだろう。日本が、本当に脅威を感じるべきなのはそこだ。毒ギョーザや段ボール肉マンも大事かもしれないけれど、そんなニュースばかりを見るのは、本当の「中国の強さ/怖さ」から目をそむける事にしかならない。中国を敵視するのは自由だけれど、敵なら敵をキッチリと見極めよう。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だ。

おいおい結局、孫子かよ。

正直、今までは外国の教育を受けている、もしくは外国人である、というだけで仕事ができている所があった。これからは、中国の凄まじい発展をどうキャッチアップしていくか、というのが重要になってくるなぁ。色々考えさせられた。

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誰かの国の選手団が入場するたびに乾杯。すっかり二日酔いになってしまいました…

投稿者 tofuku : 10:46 PM

June 07, 2008

のどか

先日、関わった仕事が着工するというので地鎮祭に呼ばれ、5時起きで行った。

敷地についたが、施主はおろか、ロッキングチェアでラジオを聴くオッサンを除いて、誰もいない。祭壇の準備もない。

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のどかだ…。


投稿者 tofuku : 06:30 PM

May 17, 2008

唐山と地震と

1500キロも離れた北京で揺れを感じるなんて…想像を絶する。

北京からそう離れていない所に、唐山という都市がある。今から約30年前、ここをマグニチュード7.8の直下型大地震が襲った。犠牲者は発表によると24万人以上、本当はその倍は居たのではないかとの説もある。92%の家屋が倒壊(真偽の程は確かではないが、残った建物の殆どは日本統治下に建てられた物で、そのため当地では日本の建物に対する信頼が厚いと聞いた)。未曾有の大災害であったにも関わらず、中国政府は他国の救援を断り、被害を拡大させた。

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唐山にある「抗震記念館」。「抗日」ではない。

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市内には、震災を受けた工場等がそのまま保存されている場所がある。一部は公園として整備される予定だと言う。

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記念館の中の展示では、中国国内から派遣された救援隊の活躍がヒロイックに描かれていた。中国人民の勝利。非常に政治的な内容だ。何もかもが政治に利用されてしまうというのは中国ではいつもの事で、今回の四川省の大地震とて例外ではない。テレビの特別番組には、本日現地入りした胡錦濤氏が被災地の視察風景や、救援隊の美談がふんだんに織り込まれている。

だからといって日本の報道が偏向してないかというと、そうではないのが悲しい所だ。中国の構造設計に関して、日本の某テレビ局の取材を受けた人の話を伝え聞いたが、「中国ってやっぱり酷いですね」というストーリーありきの取材だったらしい。

僕は、中国で大規模施設の設計経験が豊富とは言えないが、幾つかの例を思い返してみると、中国の耐震設計は日本ほどには綿密ではないものの、案外ちゃんとしている、という印象がある(凄まじい勢いで建設技術が進歩している国なので、最近設計された比較的新しい建物に限定させてもらうけれど)。今回倒壊した建物も、中層までの比較的古い建物が多いようだ。

あまり知られていないようなのでついでに書くが、建物の避難や消火設備に関する法規についても、日本と同等、それどころか日本より厳しい所も散見される。意外かもしれないが建物の身障者対応もかなり厳しい。「中国だったら法規も未整備だろうから、なんとかなるだろう」とナメた図面を持って中国に乗り込み、痛いメに会った僕が言うんだから間違いない。

日本のメディアー日本人自体がそうなのかもしれないが—は、どうしても中国を「民度の低い」、精神的に/文化的に/技術的に立ち遅れた国として見たがる所がある。確かにメチャクチャな所はあるが、本当にそのとおりの国だったら日本にとって何ら脅威ではないだろう。製品の生産量だけではなく、イビツではあるが多方面で凄まじい勢いで発展し、一部では日本を凌駕しつつあるから脅威なのだ。今の日本の中国報道は単なる気休めだ。本当の脅威を見極めてから恐れるべきだ。本当に、案外ちゃんとしてるんだから。あくまで「案外」だけどね。

話がそれたが、政治に利用されやすい大災害においては、迅速かつ最大限の援助を行うのはもちろんだが、チベット問題等の諸問題がウヤムヤにならないよう冷静にウォッチする事も重要だ(チベットの一部は震源から近いにも関わらず、被害状況は未発表の部分が多く、海外メディアも入れないという)。


日本からの救援隊は青川県という場所で活動を開始した模様で、中国のテレビでも大きく報道されている。もちろんこの報道にも政治的な意図があるんだろうが、同じ日本人として素直に誇らしい事で、ぜひ地震国日本のノウハウを生かして活躍して欲しいと思う。

来週には、ある日本人建築家が現地入りするという。また、アーティスト、ロンロン&インリによる写真芸術のギャラリー、三影堂撮影芸術センターでは募金やチャリティーオークションを開催するという。北京に居ながらこれといった活動ができてない僕としては、本当に頭の下がる思いだ。

投稿者 tofuku : 03:24 AM | コメント (2)

May 09, 2008

第3ターミナル

一週間程日本に戻っています。

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とにかくデカい、の一言に尽きる。なんでも、世界最大の建物なんだそうだ。ノーマンフォスター設計の北京空港第3ターミナル。車寄せのキャノピーのデザインは、錯視のおかげで、ただでさえデカい建物をさらにデカく見せている。

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中は曲面の屋根がひたすら続く大空間。中もやっぱりデカい。

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たいていの空港ターミナルは、出発旅客と到着旅客を効率的にさばくために、到着ロビーの上に出発ロビーが乗っかる構造になっている。そのため、出発ロビーは太陽光が差し込む開放感に溢れた場所にしやすいのに対して、到着ロビーは天井が低く、薄暗い場所となりがちだ。南国の島国に行っても、薄暗い場所で入国審査を受け、薄暗い場所で荷物を探し、怪しげな白タクの勧誘を振り払いながら薄暗いタクシー乗り場からホテルに向かわなければならない。薄暗さのおかげで、初めて訪れる国への期待感よりも不安の方がまさってしまう。

そもそも、海外からやってきたお客さんや、故郷へ帰国してくる人を明るい空間で迎えるのが筋ってもんじゃないか?出発ロビーを利用する時は、やっと帰国できる安心感や、目的地に向かう高揚感がある。出発ロビーは薄暗くたっていいから、上下逆にした方がいいんじゃない?技術的な問題があるのだろうが(たぶん物流やセキュリティーの問題だと思う)、空港を利用するたび、これって何とかならないものなの?と思っていた。

このターミナルでは、出発客は、到着ロビーの上のブリッジを渡って出発ロビーに入る構造になっている。一体的な空間のおかげで、到着ロビーもかなりの開放感がある。大きな敷地をふんだんに使えるからこそ出来る芸当だ。

この第3ターミナル、国内線用のC、オリンピックのチャーター機専用のD、国際線用のEの3つのターミナル(AとBが無いのは第1/2ターミナルと混同しないようにという配慮だそうだ)からなっている。国際線に乗るためにはチェックイン後、さらに3つのターミナルを貫通する電車に乗らなければならない。きっと、搭乗口までの距離も世界一だと思う。ただ、やたらと歩かされる代わりに、長い列に並ぶ事は殆どない。このターミナルが完成するまでは、北京空港の行列を見るたびに憂鬱な気分になっていたが、ましになって安心した。

かわりにますます強く感じるようになったのは成田空港の不便さだ…。滑走路とターミナルの配置が悪いため、飛行機は着陸してからも延々と空港内を走り回る。まるでバスみたいだ。やっと薄暗い到着ロビーに吐き出されても、ホッとする事はできない。まだ家までは3時間もかかるのだから。

投稿者 tofuku : 12:19 AM | コメント (2)

April 22, 2008

Mizuma & One Gallery

この数カ月取り組んできた北京のギャラリーが、4月26日(土)、ついにオープニングを迎えます。皆様ぜひお誘い合わせの上お越し下さい。

詳しくはこちら

20080504追記:いらして下さった皆様、有り難うございました。

投稿者 tofuku : 11:18 PM | コメント (2)

April 12, 2008

89万元

聖火リレーがちょっと凄い事になっている件、およびそれに対する周囲の中国人達の反応について…皆さんは興味ある所だろうけれど、それについては改めて書く予定です。そういっていつもサボってしまうんですがね。

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先日紹介した長城近くの敷地に、もう一度行く機会があった。数日しか違わないのに、桃の花が満開になっていた。霧が立ちこめる谷にポツポツと上品なピンク色の花が咲いていて、その向こうに微かに長城が見える。なんとも幻想的だ。赤茶けた山間に広がる幽玄の世界。漢詩に詠まれているのはこういう風景なんだろう。

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そのあと、宴席に呼ばれ、レストランに向かった。固辞するも、強引に上座に座らされる。中国の習慣における上座は、ゲストではなくホスト側が座る…ということはカネを払う人が座るということだ。「あそこって奢る側が座るんでしょ?」なんて我ながら情けない事を言うと、いいからいいから、お前はここでは外人なんだから大丈夫!と言われる。

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出て来たお酒は茅台酒だったが、ちょっとラベルのデザインが違い「国賓 内部特供酒」と書かれている。袋には「89万元(約1300万円)の価値!」と高らかに書かれている。なんでも、政府内部に特別に提供される白酒で、過去、オークションかなにかでその値段がついた事があるんだそうだ。ロマネ・コンティなんてメじゃない。コップにナミナミと注がれ、これで15万元くらいだな、なんて思いながら口をつける。2本空けたので2600万円。外人で良かった。


実際の値段は、一本500元くらいだろうな。

投稿者 tofuku : 11:28 PM

April 11, 2008

長城の中身

このほど、ある仕事の敷地を見に行って欲しいと頼まれ、万里の長城の近くへ行った。

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白い車が停まっている辺りが敷地。あいにく敷地からは見えないが、少し距離を取れば奥に万里の長城を望む事ができる。以前紹介した八達嶺なんかは、休日ともなれば凄まじい観光客で溢れかえるが、この辺りの長城はほとんど観光地化されていない。

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敷地から十分も歩けば、その長城に直に触れる事ができるが、なにぶん無名の場所なので人影もまばら、というかゼロに等しく、代わりにリスが沢山居る。道端では養蜂をやっていたりして、のどかな風景だ。

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当たり前だが万里というくらいだから長城はとっても長く、部分によって建造年代も違えば建造方法も違う。この辺りの長城は八達嶺あたりのレンガ造とは違って、花崗岩が使われている。石の刻み方は紫禁城のそれと同じで、観光資源としても貴重なモノだという。この長城に至る道は整備され、将来、修復、公開が行われる予定だという。クライアントは、それを当て込んで敷地の購入に踏み切った。

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その長城。谷底を流れる沢の部分でぶった切れて居るので、断面を見る事ができる。中身は、平たい石を土で固めながら積層させて作られている。しかし、このぶった切れた部分の石、かなりの量になりそうだが一体どこへ行ったのだろう…

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付近の農家の中には、なぜか同様の石を土で塗り固めた外壁の物が散見される。そんなに古い物ではなさそうだ。

え?まじで?いや、まさかね…。だって、世界遺産でしょ?

確たる証拠があるわけではないのであんまり突っ込まないでおくが、材料が建材等に流用されているために長城の破壊が進んでいるというのは本当の話らしい。ローマのコロッセオやパンテオンは、今はレンガむき出しの荒々しい建物だが、建造時は大理石で覆われた美しい建物だった。ところが時代が下ると大理石は剥がされ、砕いて石灰にされ、他の建物に転用されてしまった…そんな話を思い出した。ユネスコ?世界遺産?なんぼのもんじゃーい!てなもんである。

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疑惑はひとまずおくとして、この外壁は味があってなかなかよろしい。

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今は季節的に水は流れていないが、川の護岸も同様の工法で行われている。これも、味気ないコンクリート板を並べるよりずっといい。

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ある農家の居間で食事。以前にも書いたが、長城近くには、このように副業として観光客に料理を提供する民家が多くある。出される料理は農家菜とか、農飯とか呼ばれる。山菜類を含むオカズを、ヒエやアワなどの雑穀を使った素朴な主食とともに食べる。とくに、ギョーザの具のような物をヒエで包んで蒸した饅頭が美味しかった。オカズの味付けは濃いめ。

中国に限らず、食事は都市部に行けば行くほど、米や麺、饅頭類を食べる量が減ってゆく。また、北へ行く程、オカズの味付けは濃くなる。過酷な労働を行う農村部では、エネルギーを多く摂取する必要がある。南方ではサトウキビが育つので糖分を取る事ができるが、北方ではそうはいかず、穀物を多く食べてカロリーを稼ぐ。結果、味の濃いオカズでコメを掻き込む食生活になる(もっと北になるとジャガイモ中心になる)。世界中の宮廷料理や高級料理でコメが出されないのも、我々が高級料理店で御飯をオカワリするのに何となく気が引けるのも同じ理由だ。

「中国通」の人の中には、「中国では御飯は最後にちょっとだけ頼む」のが通の証拠、とでも思ってる人が多いが、それは高級料理の席でのこと。実際の中国人ー特に北方の労働者達ーはコメをよく食べている。まあ僕がそういう人たちの世界にどっぷりと浸かっているだけなんだが。

投稿者 tofuku : 06:11 AM | コメント (3)

April 07, 2008

天津タクシー観光

長らくご無沙汰してしまいました。

時間が経ってしまい、ウロ覚えになってしまっているが、タクシーのオバちゃんに連れて行ってもらった天津の建築をご紹介。オバちゃんは租界の西洋建築を勧めてきた。租界といえば上海。ご存知の通り上海にも西洋建築が数多く存在していて、正直、天津のモノは規模、質ともにそれらに劣っている点は否めない。ただし、天津の租界の数は上海のそれを上回っており、各国のお国事情を見比べることができ、また上海のように著しく商業化されていないため街の雰囲気がいい。今まで何度か天津を訪れているが、租界以外の地域が中心だったため、街の汚さや建物のクオリティーばかりが目に付いていたけれど…いやあ、なかなかいいところですよ、天津。

途中、「これはフランス風の様式だからココはフランス地区だな」なんて言うと、オバちゃんは「どうして分かるの!!」と驚く。身振り手振りで「屋根がこういう形なのはフランス風」なんて説明すると「凄い!!」しきりと感心している。僕の建築史の知識なんて高が知れているので、はっきりいってマユツバなんだが、褒めてもらえてなんだか嬉しかった。

まずはドイツ租界からイギリス租界へと車で移動してゆく。
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イギリス租界で異彩を放つノッティー(「イボイボ」の意)・ビル。1937年竣工、設計はイタリア人のボネッティとある。近代的なフレームにゴテゴテと過剰な装飾が張り付いている。

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張学良の弟、張学銘が住んでいた家とのこと。


続いて、日本租界に入る。他の国の租界に比べ、こじんまりとした建物が多く見劣りするけれど、溥儀や孫文ゆかりの建物があり、近現代史の息吹を感じることができる。
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日本租界にある、武徳殿。元々は武術の演舞場だったようだが、現在は病院の図書館として使われている。戦前日本において、国家的な様式と認定された「帝冠様式」(上野の国立博物館が代表的)。西洋的な建物に日本風の瓦屋根が乗っかるという「日本は西洋を押さえつけるんだぞ」的な様式で、これが日本租界の入口に鎮座している。

話はそれるが、近くにはつい最近場所を変えてオープンした伊勢丹がある。オバちゃんの話によるとオープン日には支配人までが入口に立ち、客を出迎えたというが、これが中国人を喫驚させたそうだ。これは良い効果を生んだ例のようだが、中国では、「偉い人は偉ぶらなければならない」という事も一方ではあるんだそうだ。例えば、日系の企業の中国工場では経験豊かな工場長が日本から派遣されて来る。そういったベテランの方々が自ら率先して掃除や片付けをしたりすると、中国人は「偉い人は偉い人なりの仕事をするべきだ」と困惑してしまうのだという。中国ビジネスは本当に難しい。

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清朝の崩壊から満州国での即位までの2年間程、溥儀の居城であった静園。孫文も一時期滞在していたという。抑制の効いた、美しい建物だが、変な写真でごめんなさい。数年前に大規模な修復工事を終え、この建物は公開されている。仕事の合間だと、開館時に訪れるのは難しいな…。

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他の租界とは比べ物にならないくらい整然としたイタリア租界。都市計画もカッチリとされ、清潔感があふれる。ファシズム期の近代様式の住宅が可愛らしく並んでいて、さながら戦前のイタリアの住宅展示場のよう(もちろん、戦前にはそんなものはない)。洋館を買う予定の方、ココが一番オススメですよ!(笑)

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入口に建つ銀行は、イタリア・ファシズム期の新古典主義建築特有のレリーフを持つ。

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地区中央のロータリーの角には、鐘楼のようにデザインされたバルコニーを持つ建物が対で建っている。

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イタリアレストランが入っていたりする。一部区画は商業地化が進んでいるようだが、この地域は閑静そのもの。

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続いてフランス租界も訪れたのだが、日没になってしまい、良い写真がないです…

投稿者 tofuku : 02:57 AM

January 25, 2008

和諧号

日/月曜と、天津/上海へ出張。日曜夜に待ち合わせの予定だったので、ちょっと早めに北京を出て、天津の街を廻ってみようと思い立った。日曜日だし、ちょっとくらい観光したってバチはあたらないでしょう!と。天津には2・3回行っているが、いずれも車に便乗し(というより拉致られ)ていたため、電車で行くのは初めて。さらには一人で電車に乗るのも実は初めて。

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北京駅。建国十周年を記念して建てられた十大建築の一つ。工事期間は8ヶ月弱、設計を含めても1年足らずで完成した驚異のスピード建築だ。共産主義革命パワーによって成し得た、ということになっている。共産中国も最初の数年間は、素晴らしく運営されていたらしい。数千年もの間、汚職まみれの政治に耐えて来た人々には、夢の社会が到来したように感じられたことだろう。ユートピアへの熱狂が現場に満ちていたのだろうと想像する。

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春節前なのでかなりの混雑。荷物のX線チェックを受けて入る。機械に通しているだけの素通り状態。ホールは、なにか懐かしいような、賑わっているのにどことなく物悲しいような。東京で言えば一昔前の上野駅のような雰囲気。

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このシャンデリアは十大建築に共通した装飾。中華風でもあり、古典主義風でもある。

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コンコース。出発の30分前に改札が開き、ホームへと出られるようになる。コンコースは待ち合いも兼ねていて、座り込んで待つ人、通り過ぎる人でごった返している。発車前に改札が開くシステムは中国独自のものだと思っていたけれど、小津安二郎の「東京物語」に似た描写があった。日本も昔は同じだったんだね。

しっかし、日本の新幹線の運行システムは凄い。数分おきに超特急をバンバン発車させてるのに、大事故を殆ど起こしていないなんてとても信じられない。

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押し合いへし合い改札を通り、ホームへドヤドヤと降りる。怒号ーといっても本人達は普通に喋っているみたいだがーが飛び交う。

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「日本企業から東北新幹線「はやて」の技術提供を受け、吸収した上で中国が独自に開発した」という<(突っ込みどころ満載の)中国オリジナル>新幹線「和諧号」。内部の作りまで含めて日本の新幹線そっくりで、日本人にとっては勝手知ったる感じでとても快適だ。LED表示の位置まで全く同じで、一瞬、新幹線に乗っているのかと錯覚するほど。途中、165キロくらいは出し、北京ー天津間を1時間強でつなぐ。車両のポテンシャルとしては300キロまでいけるらしいが、頼むからそんなに出さないで欲しい。

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そのハイテク車両の向かい側に止まっているのは古色蒼然とした(古式ゆかしいとも言える)車両。煙が立ち上る。

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天津駅についた…はずなのだが、何かがおかしい。大都市天津にしてはあまりにもみすぼらしい駅舎。よく見ると「臨時駅」と書いてあり、聞くと天津駅は大改装工事の真っ最中で使えないのだそうだ。ホテルまでブラブラ歩いていこうと思っていたが、全然違う所に着いてしまったのでタクシーを利用するしかない。中国の場合、地方都市に行けば行くほど規律がゆるみ、悪どい事を考えるタクシーが増えてゆく。その場合の対処方法もあるにはあるのだけれど、いちいち怒ってみせたりするのは面倒なので、見るからに人の好さそうなオバちゃんが運転しているタクシーを選ぶ。管理されたタクシー乗り場で並んでいると運転手は選べないけれど、駅前のカオスのお陰で、よりどりみどりだ。

早めに出たとはいえもう4時近く。観光スポットは夕方には閉まってしまう。「夜まで時間が沢山ある。私は建築師なので、天津の建物を見て回りたい。あなたが思う良い建物に連れてってくれい!」とカタコトの中国語で伝えた。

次回は、そのオバちゃんのセレクトした建物を紹介。

投稿者 tofuku : 01:03 AM | コメント (4)

January 14, 2008

中国本

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期待と不安に満ちた北京オリンピック。過去、これほど愛憎入り交じった感情と共に日本人から眺められたオリンピックも無かったのではないか。

迫り来る北京五輪をにらみ、日本では中国関連本が凄まじい勢いで出版されているが、殆どの論調は中国脅威論と中国期待論、そのいずれかだ。暗い面に目を向ければ明るい面が露光過多で吹っ飛んでしまい、明るい面に目がくらむと暗い面は見えて来ない。政治経済の面でも、文化の面でも、現代中国は文字通りコントラストが強すぎる。「中」がない。自らを「中」国と名乗り、思想的にも「中」庸を美徳とする国を語る本であるにも関わらず、だ。

脅威論も期待論も、両方とも目を通すことを心がけているけれども、脅威論の方はひたすら読者の不安をあおりまくるし、一方はこちらが心配になってくるくらい楽観的だし…どっちを読んでいてもシラケてきてしまう。

一般に「悲観論好き」と言われる日本人相手には、本来は不安を煽るタイトルの方が売れるはずだ。ただ、中国本を買う人の中には、中国と関係してビジネスをやろうとしている人も多く、こちらのターゲットも押さえておきたい…そんな出版側の都合が、両極端な状況の一因となっているのだろうと思う。

中国が世界をメチャクチャにする
"China Shakes The World"という原題がこのような邦題になる所に、出版社の戦略が見えかくれする。中国が米国やヨーロッパの中流階級の仕事を奪っていく。同時期に読んだ「フラット化する世界」では、情報網の発達で起こるインドや中国へのアウトソーシングを賞賛していたけれど、見方を変えればこうも変わるのかと感心した。

中国でつくる―松原弘典の建築
北京で活動する建築家、松原弘典氏の作品集。豊富なテキスト。特に日中関係についての冷静かつ前向きな見方は、溜飲が下がる思いで読んだ。

投稿者 tofuku : 10:32 PM | コメント (0) | トラックバック

December 05, 2007

UCCA

もう1ヶ月も前の話でごめんなさい。

11月の初めに、798芸術区にUCCA [Ullens Center for Contemporary Art]がオープンした。ガイ・ユーレンス卿(男爵)は中国の現代美術の有力なコレクター。2000点に及ぶという彼のコレクションを展示する大規模な美術館である。入場料30元。月曜休。

798の画廊たちが如何に大きいとは言え、700〜800平米前後のものが殆どだ。その中心に突如出現した8000㎡の美術館。北京のアートシーンの盛り上がりは頂点に達したと言えるだろう。この美術館の設立の話は、2年前からずっと噂になっていた。やっと、という感じ。

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2年前の日記に、改装前の同じ場所を撮った写真があるので、見比べてみてほしい(5〜8枚目)。古い(ある意味味があった)工場のインテリアは全て白く塗りつぶされ、完全な西欧型の美術館へと改装された。「西欧の美術のあり方をそのまま中国に押し付けるコロニアリズムだ」との批判もあるし、「こういった西欧型美術館も一つは必要だ」との同調意見もあるそうだ。

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一応、という感じで残された既存の機械。

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現在やっている展覧会は中国の現代アートを俯瞰するもの。1985年から中国の現代美術は始まった、という態度は、館長の费大为[Fei Dawei]氏の持論だそうだが、この点についてはいろいろと議論があるらしい。

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先日の日記でも触れた徐冰[Xu Bing]の作品がメインスペースに展示されている。

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中国の実験芸術の第一人者、呂勝中[Liu ShengZhong]の作品「招魂堂」。もともと中央美術学院の民間芸術の教授だった美術家で、中国の伝統的な切紙、特に「小紅人」と呼ばれるヒト形を表現に使う。この作品は元々、1990年に中央美術学院内の彼のスタジオで行われたインスタレーションだが、部屋丸ごとが忠実に再現されている。

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オープニングの規模も北京では類を見ない規模だった。プレスオープニング、招待客800人の晩餐会、本オープニング、招待客1500人のパーティ…と二日間に渡って行われた。最後のパーティはモエ・エ・シャンドンがスポンサーで、シャンパン飲み放題だった。100人くらいのウェイターたちが注ぎまくる。

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中央がボディガードに守られたユーレンス夫妻。

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パーティのドレスコードは「グラマラス」だそうで、その解釈に悩んだ。英語ネイティブの友人によると「グラマラス?聞いた事ないわねぇ。私はタキシードだと思う」との事。また、日本人の友人たちからは「吉本の芸人みたいに大きな蝶ネクタイしてくんじゃない?」とか「それに金ラメのジャケットを合わせれば完璧!」「それは確かにグラマラスだ!!」など、非常に親身になったアドバイスを頂いた。まあ僕もダテに3年以上も中国に居る訳じゃない。どんなドレスコードを課そうとも、多くの中国人客はジーンズ姿で現れるであろう事は容易に想像できた。でも、僕までジーンズ姿で行ってしまうと完全に中国人にとけ込んでしまう。外国人としてのプライド(?)を死守すべく、シャツとネクタイだけはして行った。

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会場で行われたパフォーマンス。

投稿者 tofuku : 08:36 PM

December 04, 2007

ネツケ

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ご無沙汰してしまいました。仕事が区切りを迎えており、忙しい毎日です。

秀水市場という北京のオミヤゲマーケットで見つけた小さな木彫りの彫刻。獅子(もしくは犬)の顔やシッポが長さ5センチくらいの楕円形のボディに刻み込まれている。足はない。どことなく可愛らしくもあり、フリークス的なオドロオドロしさもある。そんなデザインのものを選んだ。

完成度は遠く及ばないものの、日本の根付(ネツケ)と呼ばれる伝統工芸品に似ている。根付とは、キセルや印籠を帯に留めるための留め具のようなもの。粋でユーモラスな意匠が施されたものが多く、蒐集家も多いそうだ。江戸時代の携帯ストラップ的存在とも言える(漫画「ギャラリーフェイク」のウケウリで恐縮です)。

この中国版根付も、胸の部分に穴が明いていて、紐を通す事ができる。これが果たして中国の伝統的な小物か、オミヤゲ用に作ったものなのかは不明。店頭でのバリエーションの多さ(一つとして同じものがない)や、彫刻の線のクセ、木目への気の使い方などから、装飾家具の指物師が、余った材料を使って手すさびに作ったものなのではないかと推測する。ついでに売ってお小遣いを稼いでいるのではないか。

まあ、紐を買って来て、携帯ストラップとして使ってみよう。

売り子が提示した値段は95元(約1500円)、それを30元(約500円)まで値切った。これはかなり頑張ったぞ!と思い、中国人に「これいくらだと思う?」と自信たっぷりに聞いてみたところ、「うーん、15元くらい?」とか「俺は10元以上は出さないな」なんて答えが返って来た。完全な外国人価格で買ってしまった。いや、外国人だから仕方ないんだけれども、中国人との交渉はかなりできるようになって来たなと自信を深めていたところだったのでちょっと悔しい。まだまだ修行が必要だな。

買った秀水市場は、観光スポットとして有名で、いつも外国人であふれ返っている。売り子には、英語、韓国語、日本語、ロシア語を流暢に話す子が少なくない。ブランド品のニセモノが横行しており、当局が何度も引き締めを図っているが、そこはシタタカな中国人、ハイそうですかとなる訳はなく、店はあの手この手を駆使してニセモノを販売している。ブランドに詳しい女性に聞くと、ココで売っているコピー品は所詮はB級品で、もっと品質の良いものはアンダーグラウンドで流通しているらしい。ここは元々はシルクの市場だったので、シノワズリーなジャケットやシャツ、スカーフなどを買うのが良いと思う。可愛い柄のものが沢山ある。

ギャラリーフェイク (5)

投稿者 tofuku : 02:26 AM

October 27, 2007

難しい漢字#2

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ビァン!

以前紹介した、中国最難漢字と思われる「ビァンビァン麺」の「ビァン」の字。

中国人のスタッフに、難漢字に関する面白いページ(正確にはブログのエントリー)を教えてもらった。インターネット投票による難読漢字ランキングである。画像を転載するのもなんなので、どうぞリンク先をご覧ください。

1位はやたらと頭でっかちな恐ろしげな字。「悪魔払い」というような意味があるそうだ。

2位は「ビァン」がランクイン。

3位はクネクネと這いずりまわる一筆書きの字。なんでも、「一」を崩した字だという。一番簡単なはずの漢字がとっても難しくなっているんですけど…

以下21位まで、ドクドクしいながらも遊び心溢れる字が続いてゆく。

既存の字を組み合わせる事で新しい字、そしてコンセプトを生み出してゆく。漢字文化圏とはそういう「合体モノ」の文化圏なのかもしれない。中国皇帝の象徴である龍は、「角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼あるいは兎、体は大蛇、腹は蜃もしくは蛟、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛にそれぞれ似る」という。ある中国人は、これこそが多民族を呑み込み、同化させてきた中国の象徴だと言っていた。西洋人が物事を構造的に見直すことで新しいアイディアを得ようとするのとは対照的に、漢字文化圏の人たちは、既存のアイディアを組み合わせて新しいアイディアを得るのが得意なのかもしれない。そこらに居る動物達を組み合わせることで想像上の動物のイメージを生んだように。

コンセプチュアル・アートとか、ニューラル・ネットワークみたいな言葉を一つの漢字にしたらどんな風になるんだろう、なんて空想する。

80年代~90年代にかけ、中国から日本経由で世界へ出て行ったアーティストとしては蔡国強氏が有名だが、それと並ぶ美術家に徐冰[Xu Bing]という人が居る。漢字を通して、表音文字文化圏と表意文字文化圏、あるいは、西洋と東洋の断絶を浮き彫りにする、そんな作家だ。

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798で買った"Square Word"という本の表紙。よく見ると"Square""Word"がそれぞれ一字に纏められている。この本はその"Square Word"で英文を書くための手引書の体裁をとっており、これに従えば、どんな英単語も漢字風に表記できる(はずだ)。もちろん中の文章も"Square Word"で書かれていて、"international"だとか"calligraphy"なんて字は大変なことになっている。一つ一つの漢字(あるいは英単語)を判読していくのが楽しい。

The Art of Xu Bing
この本の表紙は"Xu Bing"。読めますか?

投稿者 tofuku : 06:27 PM

October 16, 2007

1ま~い、2ま~い

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以前の事。

北京から日本にもどり、職場に顔を出したら、「何、また新しいガジェットを買いに戻ってきたの?」とからかわれた。確かに、その時のカバンの中にはノートパソコン、デジカメ2台、携帯2台、電子手帳、iPodにPSPやらがギシギシと詰め込まれていた。でも、本人としては仕事に必要だから!と購入したモノばかりだ。いや、正直、ちょっと必要ないものも含まれているけれどね…仕事に全く使えないとは言いきれない!モノばかりだ。力強く言ってみても苦しいな。

ところで、夜、眠れないとき(僕は滅多にないけれど)や、電車の中で手持ちぶさたな時、皆さんは何を考えているだろうか。僕は、部屋の中やカバンの中の液晶画面の数をボーっと数えていることがある。ケータイで1ま~い、ノートパソコンで2ま~い、iPodで3ま~い…まるで四谷怪談のお岩さんのように数えていく。すると、結構あるのに驚く。たとえ、ローテク自然生活を実践している最先端ネイチャー人間だって、電卓やビデオの表示くらいは液晶やLED表示になっているだろう。

逆に、入力装置の方はどうだろう。部屋の電灯のスイッチだって立派な入力デバイスだ。携帯だって15コくらいのボタンがついている。電話、電卓、キーボード、テレビやエアコンのリモコン…挑戦した事はないが、たぶんかなりの数になるはずだ(ココで全て数えてみせないのが、このニッキの中途半端なところ)。

目覚まし時計を止めるボタンを押し、時間を確認する所から始まる、電話のボタンやパソコンのキーボードを乱打する一日。現代人はそうやって機械とコミュニケーションしながら生活している。ひょっとしたら、人間とコミュニケートしている時間より長いかもしれない。

豊かになればなるほど、家の中に表示器とボタンが増殖してゆく。文明化とは、生活の中にこれらが増えていく事なのかもしれない。為替相場の妥当性を表す「ビッグマック指数」「スターバックスラテ指数」なんてのがあるが、文明度を表す「ボタン指数」や「液晶指数」を提案したいところだ。

デザイナーが行っている努力は、そういったボタン類や表示類を整理して、洗練させている作業だ。「デザイン家電」と呼ばれるものは「えっ!スイッチどこ?」的な驚きを売りにしているものが多い。かくいう僕も、担当物件に顔を出そうとするボタンと日々格闘している…

情報の文明学 (中公文庫)

本文とは直接関係ないけれど、この本を思い出した。40年前に書かれ、今でも新鮮さを失わない予言書。読みやすい本なのでぜひ。

投稿者 tofu