March 06, 2009
Minuano / Love Logic
もう、13年近くも前の夏。
日本の大学院の学生生活は、おおむねヒマだ。作品や論文に忙しい時もあるけれど、それ以外はいたってヒマ。本来は、学生達の自主的な研究に任せている、という事なのかもしれないが、学生、とりわけバカな学生である僕が、将来に備えて勉強しよう、なんて殊勝な事を考えるわけがない。結局ヒマを満喫することになる。特に夏休みの間はヒマだった。
大学には、インターネットというものが入り込みつつあったけれど、自分の所属していたデザイン学講座の研究室は蚊帳の外だった。ゼミは、数十年前の文献を引っ張りだして来て皆で読みあうようなモノだったので、メインフレーム・コンピューターに計算させる事なんてない。パソコンと言えばマッキントッシュが一台あるだけ。ただ、そのパソコンは、教授に大プレゼンをして購入してもらったもので、当時としては最新鋭の機種だった。そんな、工学部のガラパゴス島の至宝を、僕は夏休みに占領していた。誰もいない校舎の外ではセミ達がミンミンと鳴いていた。セミは短い時を生きるのに大忙しだな。こっちがヒマなのが申し訳ないくらい。
ヒマに任せて取り組んだのはウェブサイトの製作だ。コンテンツは、当時好きだったアシッド・ジャズにすることにした。サイト名は、「まんが道」で出てくる藤子不二雄の最初の仕事、「ダルマ頓服」の広告イラストから取った。東福とトンプクは音が近いよな、と中学時代の友人のY君がボソリと言ったのを思い出したのだろう。かくして決まった「酸性ヂャズ/ダルマトンプク」という名前は、13年経っても変わっていない。
学生の社交範囲なんてたかが知れている。自分の好きな界隈の音楽について、自分より詳しい人物は廻りに居なかった。今思い返せば赤面してしまうが、自信満々でレベルの低いコンテンツをアップしていた。当時のネット世界は今に比べると牧歌的ではあったが、既に「この人は世の中に出た音楽を全部知ってるんじゃなかろうか」と思うような人達が既に居た。
たまにコメントを残してくださるコンポーザー/パーカッショニストの尾方伯郎さんもその一人で、当時は「ダダダ打楽器だ!」という打楽器の情報サイトをやってらした。相互リンクしてもらった時に頂いた、奥ゆかしいメールの行間から滲む知識量に感嘆したものだ。物心ついた時から聴いてるんだもの、僕なんかが太刀打ちできる訳がない。70年代以降のジャズ/クロスオーバー/ブラジリアン・フュージョン等々については、この方から多くを教えて頂いた。
考えてみると、僕の音楽関連の人間関係はネットがきっかけになったものばかりだなぁ。N氏だってそうだしなぁ。ネットには賛否あるけれど、僕に関しては恩恵の方がはるかに多いなぁ。
さて、思い出話が長くなりましたが、その尾方伯郎さんによる、Lampの榊原香保里さんのウィスパー・ヴォイスをフィーチャーしたポップ・プロジェクト、Minuanoの"Love Logic"が発売になりました。毎度の事ながら、尾方氏の広範な音楽性が生かされた素晴らしいアルバムになっています。
ポップでソフトロックでキャッチー。そしてちょっぴりサウージ/サウダーヂでブラジリダーヂ。スピリチュアルでトライバルかは聴く人の心境によります。……おいおい。このところ、音楽関係の文章を書いてないのですっかりボキャ貧になってしまっているので、どんな音か知りたい方はコチラで試聴下さい。僕なんかがどうこう言うより、実際聴いてもらうのが一番。
車の中でデート中にポップスとして軽く聴くのもよし、オーディオを仏壇に据えてバックの技巧に耳を澄ますのもよし。ユニット名をパット・メセニーの曲名から取っているくらいだから、演奏やレコーディングに対するコダワリも半端ない。学生の方は、春休みの研究室のBGMとして聴くのもよし!将来、社会人になって仕事に疲れた頃に、その時の情景とこの音楽がフラッシュバックする事でしょう。まるで今の僕みたいにね。薄汚れた北京の空の下、日本の入学シーズンの桜を思い出す、そんな優しい音楽です。
投稿者 tofuku : March 6, 2009 01:40 AM
コメント
垢抜けた学生時代を送ってらっしゃいますねー!さすが。
思えば北京に来てからはもっぱらソウルかスカしか聞いてないことに気づきました。
今日も戦わねば!という時ぴったりなんですよね。どうしてそんなにいつも戦ってなきゃいけないのかが問題ですが。
投稿者 丁未堂 : March 9, 2009 06:14 PM
> 丁未堂 さん
垢抜けてますかね?垢抜けた世界に対する憧れは人一倍強かったと思いますが、結局垢抜けない学生時代だったような。
中国は戦いの連続ですね…。こちらの人は、戦い慣れてると言うか…。
投稿者 tofuku : March 12, 2009 01:28 AM
