October 04, 2008
いよいよオープン

諸事情により仕事の話はあまり書いてこなかったが、そろそろ書いてもいい頃だろう。
10月18日、磯崎アトリエの担当者として、ここ5年近く取り組んできた中央美術学院の美術館がオープニングを迎える。過去の現場写真を眺めていると、ローカルや職人達との思い出が蘇る。といってもほとんどが怒鳴ったり怒鳴られたりした記憶。今でこそお互い笑って話せるが、まさに悲喜こもごもだった。
書いたスケッチや図面の数は、おそらく数千枚になると思う。数千カ所を検討したのではなく、全ての箇所で何度も試行錯誤したためにとてつもない量になってしまった。
「これ、できる?」
「うん、もちろんできる。簡単だ」
「やっぱりできない」
「なら、こうすればできるはずだ」
「やってみる」
「やっぱりできない」
そんなやり取りを幾度繰り返した事か。ローカルや施工の担当者は、辛抱強く付き合ってくれた…最後は「日本人建築家の仕事は二度とやりたくない」と笑いながら言われたが。
中国を代表する有名大学の付属施設、アートについて理解のある施主。ローカル達にも「こんなに恵まれた仕事は日本でもない、中国の限界を知る一生に一度のチャンスだ。粘れるだけ粘ろう」と言い聞かせ、似たような図面を何度も描き直させた。
しょっちゅう施主の元を訪れ、説得を試みた。粘りすぎて、施主から「東福、お前はよく頑張った。それは分かったから頼むから止めてくれ」とストップが入る事もしばしばだった。とはいえ、理解のある施主であることは確かで、僕の提案はかなり受け入れてもらえた。
正直、構造が上がり始めてからも、この建物は果たして完成するのだろうか?と半信半疑だった。工事がだいぶ進んで内装に入った頃、手持ち無沙汰の職人達がボーッと天井を眺めているのを見て、やっと、これは良い建物になる!という確信を得た。
4年もの間、中国的システムに対して愚痴りながらも、それを心のどこかで楽しんでいた。まあ、そのくらいの気構えでなくてはココでの仕事はできない。来たばかりの頃は、中国の建築生産のシステムが分からずにとまどうばかりだったが、試行錯誤を繰り返すうちに、中国でクオリティーの高い建物を作るコツが掴めてきた気がする。次からはもう少し効率的に仕事ができると信じたい。
いろいろ思い出されるなぁ。
…と、センチメンタルな気分に浸りたい所なのだが、オープニングが終わって一区切り付くまではまだまだ気の抜けない状況が続く。格好悪い家具を発注しないように目を光らせたり、雑誌の取材対応をしたり…まだ仕事は残っている。
つーか、オープニング本当に間に合うの?って状況なんですが…
雑誌発表の状況はこちらで紹介しています。日本の専門誌での発表はもう少し先になりそうです。最も一般向けだと思われるSANKEI EXPRESSの記事はこちら。
投稿者 tofuku : October 4, 2008 06:21 PM
コメント
いよいよ、なのですね。
私が北京に行った4年前には確かもうとりかかられてましたもんね。
中国を少しでも知る者にとって、
Tompukuさんのお仕事はやっぱりすごいですよ!!!
あまり「すごい」を言うと軽くなっちゃいますが(苦笑)、
中国の方とこれほど長きに渡り
粘り強くお仕事を進めてこられたことがすごいと思うのです。
投稿者 yosomist : October 4, 2008 10:49 PM
お疲れ様でした。妥協の無い仕事は何時までも形として残るし、自分の自信になって残りますね。ものすごく大変な環境に居ると思いますが、頑張ってくださいね。粉ミルクは飲まないように!
投稿者 Orpheu : October 5, 2008 09:42 AM
お褒め頂き、有り難うございます。ちょっと自画自賛的なニッキになってしまい、反省。
> yosomistさん
僕は、粘り強いとはいっても、スタッフの中国人達に好き勝手に指示を出していただけですから…実際矢面に立つのは彼女達なので、そのプレッシャーは大変なものだったろうと思います。
>Orpheuさん
2月に完成した時には、これは妥協が無い!最高のクオリティーだ!と思っていたのですが、8ヶ月が経った今見てみると色々な所が目に付きます。その間にも、クオリティーの高い建物がどんどん建って行きます。中国の技術の発展は凄まじく、ボーッとしているとすぐに追い抜かれてしまいます…
ミルクは飲んでいません…今、中国のスターバックスは豆乳で作っています…ご心配有り難うございます。
投稿者 tofuku : October 6, 2008 04:53 PM
今度こそついにオープンなのですね。
「今秋オープン」を何度聞いたことか・・・
きっと関係者のみなさま、感無量なこととお察し申し上げます。
ここのカフェのマネージャーにならないか、と誘われました。しんどそうなのでお断りしました。
今度から花家地を訪れる人に、美術館を目印にしてもらえます。
投稿者 ていびどう : October 8, 2008 02:31 PM
>ていびどう さん
僕自身は感無量は通り越してしまいました。よく「設計仕事はできたときの感激がたまらない」なんて言いますが。僕の場合は鈍感、というかジワジワとやってくるみたいです。毎日現場で進捗状況を見ていますしね…
うむー、カフェ、どのくらい人が来るのか想像もつきません。忙しいのかな?
目印としては低いですが、住宅地にこつ然と現れるビックリ感はあると思います。タクシーの運転手に「なんじゃこれ!」と言われたこともあります。「さーて、なんだろうね」と返していますが。
投稿者 tofuku : October 9, 2008 02:16 PM