« April 2008 | メイン | June 2008 »

May 17, 2008

唐山と地震と

1500キロも離れた北京で揺れを感じるなんて…想像を絶する。

北京からそう離れていない所に、唐山という都市がある。今から約30年前、ここをマグニチュード7.8の直下型大地震が襲った。犠牲者は発表によると24万人以上、本当はその倍は居たのではないかとの説もある。92%の家屋が倒壊(真偽の程は確かではないが、残った建物の殆どは日本統治下に建てられた物で、そのため当地では日本の建物に対する信頼が厚いと聞いた)。未曾有の大災害であったにも関わらず、中国政府は他国の救援を断り、被害を拡大させた。

tangshan1.jpg
唐山にある「抗震記念館」。「抗日」ではない。

tangshan2.jpg
市内には、震災を受けた工場等がそのまま保存されている場所がある。一部は公園として整備される予定だと言う。

tangshan3.jpg

tangshan4.jpg

記念館の中の展示では、中国国内から派遣された救援隊の活躍がヒロイックに描かれていた。中国人民の勝利。非常に政治的な内容だ。何もかもが政治に利用されてしまうというのは中国ではいつもの事で、今回の四川省の大地震とて例外ではない。テレビの特別番組には、本日現地入りした胡錦濤氏が被災地の視察風景や、救援隊の美談がふんだんに織り込まれている。

だからといって日本の報道が偏向してないかというと、そうではないのが悲しい所だ。中国の構造設計に関して、日本の某テレビ局の取材を受けた人の話を伝え聞いたが、「中国ってやっぱり酷いですね」というストーリーありきの取材だったらしい。

僕は、中国で大規模施設の設計経験が豊富とは言えないが、幾つかの例を思い返してみると、中国の耐震設計は日本ほどには綿密ではないものの、案外ちゃんとしている、という印象がある(凄まじい勢いで建設技術が進歩している国なので、最近設計された比較的新しい建物に限定させてもらうけれど)。今回倒壊した建物も、中層までの比較的古い建物が多いようだ。

あまり知られていないようなのでついでに書くが、建物の避難や消火設備に関する法規についても、日本と同等、それどころか日本より厳しい所も散見される。意外かもしれないが建物の身障者対応もかなり厳しい。「中国だったら法規も未整備だろうから、なんとかなるだろう」とナメた図面を持って中国に乗り込み、痛いメに会った僕が言うんだから間違いない。

日本のメディアー日本人自体がそうなのかもしれないが—は、どうしても中国を「民度の低い」、精神的に/文化的に/技術的に立ち遅れた国として見たがる所がある。確かにメチャクチャな所はあるが、本当にそのとおりの国だったら日本にとって何ら脅威ではないだろう。製品の生産量だけではなく、イビツではあるが多方面で凄まじい勢いで発展し、一部では日本を凌駕しつつあるから脅威なのだ。今の日本の中国報道は単なる気休めだ。本当の脅威を見極めてから恐れるべきだ。本当に、案外ちゃんとしてるんだから。あくまで「案外」だけどね。

話がそれたが、政治に利用されやすい大災害においては、迅速かつ最大限の援助を行うのはもちろんだが、チベット問題等の諸問題がウヤムヤにならないよう冷静にウォッチする事も重要だ(チベットの一部は震源から近いにも関わらず、被害状況は未発表の部分が多く、海外メディアも入れないという)。


日本からの救援隊は青川県という場所で活動を開始した模様で、中国のテレビでも大きく報道されている。もちろんこの報道にも政治的な意図があるんだろうが、同じ日本人として素直に誇らしい事で、ぜひ地震国日本のノウハウを生かして活躍して欲しいと思う。

来週には、ある日本人建築家が現地入りするという。また、アーティスト、ロンロン&インリによる写真芸術のギャラリー、三影堂撮影芸術センターでは募金やチャリティーオークションを開催するという。北京に居ながらこれといった活動ができてない僕としては、本当に頭の下がる思いだ。

投稿者 tofuku : 03:24 AM | コメント (2)

May 15, 2008

The James Taylor Quartet / Live at the Jazz Cafe, London

5月16日にP-Vine Recordsより発売される"The James Taylor Quartet / Live at the Jazz Cafe, London"の解説を執筆させて頂きました(このCD、輸入盤と日本国内盤の二種類あり、私の解説があるのは日本盤の方です)。

自分が学生時代、熱狂していたアーティストのライナーを書く事になるとは…。感慨深いものがあります。解説の方も、多少、懐かしモードに入ってしまっています。本当は10代、20代の若者に聴いてもらいたいのに、オッサン臭い文章。

渋谷/新宿タワーレコード等、大型店では試聴機に入ると思われますので、どうぞお買い求め下さい。もちろんアルバムの内容も素晴らしいです!以下、N氏による紹介文です。


The James Taylor Quartet / Live at the Jazz Cafe, London

元祖アシッド・ジャズの巨頭、ジェームズ・テイラー・カルテットが過去17年間で150回以上ものライヴを行なってきたロンドンのジャズカフェ。 そのホーム・グラウンドでだからこそ何にも囚われることなく自由気ままに演奏するJTQの新たな一面が見れるライヴ・アルバム! モッズ、アシッドジャズからジャズファンクへ! いつの時代もヘヴィでファンクなオルガン・ジャズの頂上にはこのオトコがいた! 御大JTQ渾身のライヴ・アルバムが、遂に登場! 長年フロアを沸騰させてきたアツ過ぎる自身の名曲の数々に加えて、ハンコック「Blow Up」やブーガルー・ジョー・ジョーンズ「No Way」などライヴの真骨頂とも言うべき鉄板カバーも炸裂! ジャズファンクの醍醐味はやっぱライヴ! そう断言できる、入魂の一枚です。

投稿者 tofuku : 04:00 PM

May 10, 2008

Roman Andren / Juanita

Roman Andren / Juanita

「これが北欧ブラジリアンの到達地点!」というオビの売り文句には、「そんなカテゴリーあったっけ?」とちょっと笑ってしまった。

帰国時、N氏に連れられてジャズ系のクラブイベントやライブに行く事がある。一昔前なら大変な人出になっていたであろう出演者のイベントがガラガラなのを見るたび、そして、客層が妙に高めなのを見るたび、メインストリームは自分から遠い地平に行ってしまったんだなぁ、とセンチメンタルになってしまう。もちろん、耳元で「僕らが聞いていたジャンルはとっくに消滅しました!今時こんな音楽聞いてる若い子はいません!時代遅れも甚だしい!」と毒を吐き続けるN氏のせいもある。

まあ、そういいつつも会場で一番盛り上がってるのもN氏自身なんではあるが。マーケットを見極める冷静な目をもつ一方で、ビヨンセにも、くるりにも、Perfumeにも、ジャズにもフュージョンにもサンバにも均等に愛を注ぐ彼は、本当に尊敬に値する音楽バカ…いやカリスマ・バイヤーだと思う。

そんな懐メロに片足を突っ込んでしまっているクラブジャズ/ブラジリアンというジャンルの中にあって、「Roman Andren / Juanita」は高い評価を受けているんだそうだ。

なんでもこの人、本国スウェーデンでは「北欧のデオダート」と呼ばれているという。僕は、デオダートというと、渡米後、CTIからヒットをバンバン出していた頃の派手派手なサウンドー「アメリカ横断ウルトラクイズ」のテーマ曲に使われていたようなーをイメージしてしまう。確かにこのアルバムも厚い/暑いオーケストレーションの曲が多いが、コーラス主体で派手さは少し控えめだ。コーラスに薄く被せられたフィルターは、70年代のイージーリスニングの録音を彷彿とさせる。マルコス・ヴァーリやエドゥ・ロボと言われた方がピンと来るんじゃないかな。

スウェーデンのAjabu!レーベルは、ビッグバンド/ブラジリアンのフレーヴァーあふれるクラブ系録音をリリースしている。最近、一部で注目のMiriam Aidaなんかもそう。今、クラブジャズと言われる音楽が辛うじて生き残っているのは、イギリス、スウェーデン、イタリア、そして日本くらいだろう。結局、90年頃のTotally Wiredの頃から変わっていない。

5月16日に、私が解説を書いたCDが発売になります。詳細はそのころに。

Eumir Deodato / "2"

Edu Lobo / Edu Lobo

Marcos Valle / Marcos Valle[1970]

投稿者 tofuku : 09:47 PM | コメント (1)

May 09, 2008

第3ターミナル

一週間程日本に戻っています。

beijing_airport_terminal3-0.jpg

とにかくデカい、の一言に尽きる。なんでも、世界最大の建物なんだそうだ。ノーマンフォスター設計の北京空港第3ターミナル。車寄せのキャノピーのデザインは、錯視のおかげで、ただでさえデカい建物をさらにデカく見せている。

beijing_airport_terminal3-2.jpg

中は曲面の屋根がひたすら続く大空間。中もやっぱりデカい。

beijing_airport_terminal3-1.jpg

たいていの空港ターミナルは、出発旅客と到着旅客を効率的にさばくために、到着ロビーの上に出発ロビーが乗っかる構造になっている。そのため、出発ロビーは太陽光が差し込む開放感に溢れた場所にしやすいのに対して、到着ロビーは天井が低く、薄暗い場所となりがちだ。南国の島国に行っても、薄暗い場所で入国審査を受け、薄暗い場所で荷物を探し、怪しげな白タクの勧誘を振り払いながら薄暗いタクシー乗り場からホテルに向かわなければならない。薄暗さのおかげで、初めて訪れる国への期待感よりも不安の方がまさってしまう。

そもそも、海外からやってきたお客さんや、故郷へ帰国してくる人を明るい空間で迎えるのが筋ってもんじゃないか?出発ロビーを利用する時は、やっと帰国できる安心感や、目的地に向かう高揚感がある。出発ロビーは薄暗くたっていいから、上下逆にした方がいいんじゃない?技術的な問題があるのだろうが(たぶん物流やセキュリティーの問題だと思う)、空港を利用するたび、これって何とかならないものなの?と思っていた。

このターミナルでは、出発客は、到着ロビーの上のブリッジを渡って出発ロビーに入る構造になっている。一体的な空間のおかげで、到着ロビーもかなりの開放感がある。大きな敷地をふんだんに使えるからこそ出来る芸当だ。

この第3ターミナル、国内線用のC、オリンピックのチャーター機専用のD、国際線用のEの3つのターミナル(AとBが無いのは第1/2ターミナルと混同しないようにという配慮だそうだ)からなっている。国際線に乗るためにはチェックイン後、さらに3つのターミナルを貫通する電車に乗らなければならない。きっと、搭乗口までの距離も世界一だと思う。ただ、やたらと歩かされる代わりに、長い列に並ぶ事は殆どない。このターミナルが完成するまでは、北京空港の行列を見るたびに憂鬱な気分になっていたが、ましになって安心した。

かわりにますます強く感じるようになったのは成田空港の不便さだ…。滑走路とターミナルの配置が悪いため、飛行機は着陸してからも延々と空港内を走り回る。まるでバスみたいだ。やっと薄暗い到着ロビーに吐き出されても、ホッとする事はできない。まだ家までは3時間もかかるのだから。

投稿者 tofuku : 12:19 AM | コメント (2)