- February 8, 2007 2:34 AM
- architecture/design | china
2年ほど前、ローカルの設計者が、「今僕がやっているマンション、買っているのは殆どが日本人だよ」と言っていた。基本設計を日本の設計者が担当しているという安心感も手伝って、投機目的の日本人達が競うように購入していたようだ。まあそれも昔の話で、最近では加熱しすぎた不動産投資を引き締める政策がとられているため、外国人は急速にマンションを買いにくい状態になっているという。ついこの前まで、海外に対して著しい優遇政策をとることで投資を呼び込んでいた国とは思えない…。
とはいえ、中国のディベロッパー達は依然として、意欲的に開発を行っていて、いわゆる「高級物件」も続々と生まれている。これは中国の富裕層自身が購買力をつけてきているという証でもある。3年前、僕が初めて北京を訪れた頃は、1万元/㎡(43万円/坪)という価格帯には、北京中心部にあるような高級物件が属していた。今では、そのカネでは、エリート若夫婦をターゲットにしているような、郊外のマアマアの物件がやっと買えるくらいだ。
現在、北京で最高値なのは王府井そばの某マンションで、6万元/㎡(300万円/坪)だとか。もしこれがそのまま東京にあったとしてもかなり高めの価格設定である。3倍とも4倍とも言われる中国と日本の物価差を考えると…とてつもなく高価な物件だ。
注目の高級物件の一つが、アメリカの建築家スティーヴン・ホール設計による「当代MOMA」という現在建設中のマンションである。「当代」とは日本語で「現代」、"MOMA"は、英語だと"Museum of Modern Art"、すなわち「近代美術館」を指してしまう。直訳すると「現代近代美術館」。言葉が微妙にカブっちゃってるし、そもそもマンションじゃないし、なんとも妙チクリンな名前だ。
中国人にとって、「モマ」という言葉はとても心地よく響くんだそうだ。まあ、日本人である我々も、本来は豪邸を意味する「マンション」という名で集合住宅を呼んでいるくらいなので、笑う立場には無いんだけれど。

住棟間を空中で繋いだデザイン。マンションの場合、このような形は成立しにくい。理由は簡単で、通常、人は地上から目的の部屋に行ければ事足りるので、住棟間を空中で移動できるようにする必然性が無いからだ。60年代以降、このような形の建築は多く試みられてきたが、経済的な理由や技術的な理由で、かなりのモノが空想で終わっていた。中国の勢いは、建築家達の悲願を次々と実現させていっている。そして、重要なのは、そんな建築家の奇想が、付加価値として富裕層への大きなアピールとなってきているという事だろう。
中庭の池には映画館とホテルが浮かび、周囲には幼稚園と公園が配置されている。

繋いでいる部分は、アスレチック・ジムや集会室などになっており、ここはプール。空中に巨大な水瓶を浮かべることの大変さは、大きめのペットボトルを持ったことのある人なら分かると思う。

モデルルーム。
中国の場合、マンションは躯体のまま引き渡され、買主が内装をするケースが殆どだが、この物件は内装込みである。もちろん内装設計もスティーブンが担当している。
空調の目玉として、この物件では全面的に輻射冷暖房を採用している。専門外の方のために簡単に書くと、床、壁、天井などが「床暖房で床冷房」になっているようなものだ。管をそこらじゅうに這わせる必要があるため、コスト高になる反面、部屋内の温度分布が安定し、部屋内の湿度も安定するというメリットがある。また、ご覧の通り、部屋には空調機やその吹き出し口が必要ないため、スッキリとしたデザインが可能になる。
さらに、その熱源には地下熱を利用している。これも簡単に説明すると、「井戸の水は夏冷たく、冬暖かい」原理を応用したようなものだ。当然、もの凄い数の管を地中深く打ち込まなければならないため、膨大な初期投資が必要になる。その反面、空調のランニングコストは安くなり、環境負荷も低減される。このような大規模なエコ対応さえもが富裕層へのアピールポイントとなっている。中国はそんなところまで来ている。

所々にビビッドな色を差していくのがスティーヴン流。扉の金物の一つ一つまで、かなり細かく設計されている。
気になる価格は1㎡あたり、3万元弱(40万円)だそうだ。坪あたり130万円。北京における一般的な高級マンションの約倍で、東京における一般的なマンションの約半分。立地や仕様などを総合的に(かつ個人的に)判断すると、かなりお買い得だと思う。東京では、スティーブン・ホールが設計したマンションは、坪300万円出してもおそらく買えないだろう。
中国スター達も続々と購入を決めているというこの物件、ご覧のアナタも一軒どうですか?ただ、現在は外国人はローンが組めないため、満額用意する必要があるそうだけれど…